他店でも広がる「深夜営業店舗」
実はここに大きな需要があるということは競合の「丸源ラーメン」の動きが証明している。24時間営業ではないものの「深夜営業店舗」を拡大しており、2025年9月4日時点で、全227店舗のなかで25時までの営業を104店舗、26時までを1店舗、27時までを4店舗にまで増やしているのだ。当たり前だが、深夜まで営業をすればその分、人件費も電力も余計にかかる。それを差っ引いてもこれほど深夜営業店を増やしているということは、われわれが思っている以上に「深夜にラーメンを食べる客」というものが存在しているのだ。そして、この“ナイトタイムエコノミー”を誰よりもうまく取り込むことに成功したのが「ラーメン山岡家」だったというわけだ。
ファミリー層・若者にまで浸透したワケ
このような指摘をすると「いやいや、ラーメン山岡家はトラック運転手などの深夜労働者だけじゃなくて昼や夕食時にファミリー層や若者もたくさん利用しているぞ」という反論があるかもしれない。しかし、そのようなイメージを広げることができたのも実は「深夜にラーメンを食べる客」のおかげだ。より具体的に言えば、「深夜にドライブをする若者」である。ご存じない方も多いだろうが、実は今、若者の間で「深夜ドライブ」が流行している。
気の置けない仲間たちと静かな街並みや、工場夜景、街の夜景などをたどって、その様子をTikTokなどにあげる人が多いのだ。実際、2025年10月には仕事に行き詰まった若い女性2人が「現実逃避」として深夜ドライブに繰りだすというドラマ『ふたりエスケープ』(テレビ東京系)も放送された。そんなトレンドにうまく合致したのが24時間365日営業の「ラーメン山岡家」だったのだ。
もちろん、若者がここに集うのは「開いている」という理由だけではない。醤油、味噌、塩、特製味噌、辛味噌、塩とんこつ、激辛という「レギュラーメニュー29種類」というラーメンのバリエーションの豊富さもある。
こうして深夜ドライブをする若者たちに選ばれるということは、TikTokなどでドライブ中に立ち寄った「うまい深夜ラーメン」として写真や動画が拡散するということだ。それが流れてくれば知名度は上がるし、バズれば子どもは「この山岡家ってとこに行きたい」となり、結果、ファミリーでランチや夕食に訪れる。
インフルエンサーも巻き込んだ好循環が業績を押し上げ
しかも、このような山岡家関連の投稿がバズるとなれば、「数字」のほしいインフルエンサーも自発的に「山岡家に行ってきました動画」をアップしていく。そういう好循環が業績を押し上げているということをうかがわせるやりとりが、2025年1月通期決算についての機関投資家からあった。今期2月以降の既存店の売上が好調な要因は何かと問われたところ、運営会社はインフルエンサーの宣伝が大きいと回答。さらにそのようなインフルエンサーにどれほど広告宣伝費を払っているのかという質問に対しては、費用を全く払っていないとして、あくまでインフルエンサー側が勝手にやってくれていると説明している。
なぜ勝手にやってくれるのかというと、インフルエンサーらの「客」である若者たちがTikTokなどで「山岡家ネタ」を上げているからだ。
もちろん、この成功モデルには、競合のラーメンチェーンも気付き始めている。大阪では深夜のみしか営業しないラーメン屋も登場した。
そう遠くない未来、「深夜ラーメン市場」の熾烈(しれつ)な争いが始まるかもしれない。
この記事の執筆者:
窪田 順生
ノンフィクションライター
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経てノンフィクションライター。また、報道対策アドバイザーとしても、これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行っている。
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