ヒナタカの雑食系映画論 第211回

実は「パワハラの解像度」が高い映画『HELP/復讐島』を見る前に知ってほしい3つのこと

『HELP/復讐島』は笑えてゾッとする、素晴らしい娯楽作でした。実は「パワハラの解像度が高い」ことを含めて、見る前に知ってほしい3つのことを解説しましょう。(※画像出典:(C) 2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.)

3:主人公もけっこうヤバい?「想像すると怖い」ホラーでもある

無人島に辿り着いてからの展開はいっさい知らないほうがいいというくらいですが、単なる「逆転劇」だけに終わらないということは告げておきましょう。

初めこそパワハラ上司は脚をケガして動けず、サバイバル知識のある主人公のほうが当然「優位」。言うまでもなくオフィスの時とは立場が正反対というわけですが、その後は両者の力関係が微妙に、時には大きく変わっていく「パワーゲーム」が展開していくのです。
中でも、このパワハラ上司が口だけ達者というだけでなく、意外と頑張るし、殊勝な態度を見せるということは大きなポイント。自身を救ってくれた主人公へ「ありがとう」と素直に感謝を告げることもありますし、なんなら連携を取っていたりして、「けっこういいコンビなのでは?」と思わせる場面もあるのですから。

一方で、とある場面では、主人公の「狂気」もはっきりと現出します。「あれ? 主人公は理不尽なパワハラを受けたかわいそうな人だけど、実はかなりヤバいのでは?」と、観客に良い意味での揺さぶりをかけてくれていて、そのイヤな予感が当たるのか当たらないのか……という翻弄(ほんろう)される感覚も、また楽しんでほしいのです。
映画ヘルプ
(C) 2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.
さらに重要なのは「過去の話」。2人が語るそれぞれの境遇は同情を誘うものではあるのですが、「それは本当のことなのか?」と、そこでも揺さぶりをかけてくれるのです。まさかのクライマックスと結末から逆算して、「そういえばあの時の話って……」と想像すると、さらにゾッとさせてくれるというのが、ホラーとして恐ろしくも面白かったりします。

主要登場人物がほぼ2人だけだからこそ、俳優の演技力が光るというのは先週公開の『MERCY/マーシー AI裁判』とも通じる要素。『アバウト・タイム 愛おしい時間について』とは真逆の不幸まっしぐらな道に進むようで、たくましさが狂気的なレベルに達するレイチェル・マクアダムス。『メイズ・ランナー』で気弱さもあった主人公が見る影もない超絶イヤなやつで、時には絶望の感情をも体現したディラン・オブライエン。この2人を、誰もが絶賛するのではないでしょうか。
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(C) 2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.
ともかく、パワハラの問題提起をしつつも、やはり基本はブラックなユーモアに包まれた、ハラハラドキドキかつサプライズにも満ちたエンタメ性こそに期待してほしいところ。普段からパワハラに怒りを覚えている人には「よくやってくれた!」とやっぱりスカッとできる(でもそれだけじゃない複雑な気持ちも芽生える?)でしょう

それこそが、現実ではできない、フィクションの役割です。ぜひとも、やはり笑いが漏れる映画館でこそ楽しんでほしいです。
ヒナタカ
この記事の執筆者: ヒナタカ
映画 ガイド
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。 ...続きを読む
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