6位 『ひゃくえむ。』
同名漫画を原作とした、陸上競技の100m走に賭けた男たちの「情熱と狂気」を描いた作品です。切磋琢磨していた友人の2人がライバルとなる過程は『国宝』に似ており、原作者が同じ魚豊による漫画およびアニメ『チ。 地球の運動について』に通ずる、「なぜここまでするのか?」という、1つの事象に打ち込む人々の哲学的な思考も興味深い内容になっていました。漫画をアニメ映画にする意義も確かに感じる作品で、白眉となるのは3分40秒にも及ぶ「走るまでの準備や手順を描いた長回し」。100m走はたった約10秒で決着が着くからこそ、それ以上の時間をかけた準備や手順がいかに大切なのかということも思い知らされますし、ここだけで制作に1年がかけられた(!)作り手の苦労も報われるものでした。「高校生篇の大胆なアレンジ」「ネット越しでの会話の演出」などの映画化にあたってのチューニングも見事です。12月31日よりNetflixで独占配信です。
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5位 『無名の人生』
『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』などの密度の高い作画に力を入れた作品とは対照的な、簡素とも言える画かつ、朴訥(ぼくとつ)とした語り口の作品でありながら、それこそが唯一の魅力になっている作品です。内容は『フォレスト・ガンプ/一期一会』に近い、ある男の一生を追う作品でありつつも、その先に「とんでもないところに連れて行かれる」壮大な物語になっていました。「あり得ないほどに波乱万丈な人生」を描きつつも、主人公がアイドルを目指す過程で、旧ジャニーズ事務所におけるジャニー喜多川の性加害事件をほうふつとさせる問題が描かれるなど、「現実を参照している」作品でもありました。その先に待ち受ける出来事もまた今の混乱の世の中では「あり得る」ものとして恐ろしく映るでしょう。



