映画『トリツカレ男』に広がる大絶賛の声! 最優先で見てほしい3つの理由を全力解説

映画『トリツカレ男』を最優先で見てほしい3つの理由を全力解説します!事前のキャラクターデザインへの賛否が覆った理由もはっきりとありました。 (C)2001 いしいしんじ/新潮社 (C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会

3:「夢中になること」を肯定してくれる物語

本作の基本的なあらすじは、何かに夢中になってばかりの青年のジュゼッペが、公園で風船売りをしている女の子のペチカに一目ぼれをして、なんとかアプローチをしようと奮闘するという、一途なラブストーリーです。

恋には不器用だけど、彼女が本当に大好きで、時には自分の恋の成就なんかよりも、彼女の悩みごとを優先してしまうジュゼッペのことを、誰もが好きになれるのではないでしょうか。
トリツカレ男
(C)2001 いしいしんじ/新潮社 (C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会
しかしながら、本作は良い意味で、ほのぼのとした幸せなラブストーリーだけでは終わりません。後半からはペチカが心に抱える悲しみの一番の理由が明かされ、シエロからの「こんなの間違ってる!」というシ心からの助言があってもなお、ジュゼッペはペチカの幸せのために、とある行動に出るのです。
トリツカレ男
(C)2001 いしいしんじ/新潮社 (C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会
その時のジュゼッペの行動はシエロからも言われている通り、客観的には間違った行動なのかもしれませんし、もはや狂気的ですらあるということに、一定の賛否も呼ぶでしょう。

しかし、献身という言葉でも収まらない愛情と、それ以上の不器用さと、それを経てのまさかのクライマックスに、涙する人はきっと多いはずです。
トリツカレ男
(C)2001 いしいしんじ/新潮社 (C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会
また、ここまでドラマチックな恋でなくても、本作は何かに「トリツカレル」こと、夢中になったことは、もしも自分が本来目指していた、納得できる結果にならなかったとしても、それは別の何か良いことへとつながるのかもしれないという、とても普遍的な人生訓にもなっています。
トリツカレ男
(C)2001 いしいしんじ/新潮社 (C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会
人は誰しも、他人だけでなく自分自身に対しても、頑張ることや努力をすることに、「こんなことがなんになるんだ」と、冷笑的になってしまうことがあると思います。そんな時に、『トリツカレ男』は、「夢中になること」そのものを肯定してくれる、そんな物語になっていると思うのです。

そこに付随して、「とにかく見て!」と言わざるを得ない理由は、劇中の最大の感動ポイントこそがネタバレ厳禁であり、まだ見ていない人に伝えることが難しいことにもあります。見終われば、「トリツカレ男」という奇妙にも思えかもしれないタイトルに必然性があるとわかるはず。シーンの1つ1つを思い出せば、見ている時とはまた違った感慨が生まれるでしょう。

まとめ:傑作アニメ映画が埋もれてしまいかねない状況が歯がゆい! だから見て!

最後になりますが、昨今では国民的な人気を得た漫画およびテレビアニメの劇場版の超特大ヒットが話題になる一方で、『トリツカレ男』のように単体で展開するアニメ映画が、なかなか注目されづらいという、歯がゆい現状があると思います。

しかも『トリツカレ男』は、同日に『劇場版 呪術廻戦「渋谷事変 特別編集版」×「死滅回游 先行上映」』や『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』が上映スタートし、IMAXで先行リバイバル上映された『もののけ姫』が通常スクリーンでも拡大公開、さらには1週前から『映画 すみっコぐらし空の王国とふたりのコ』も公開中と、ファンが多いアニメ映画が渋滞していたため、「選ばれなくなってしまうタイミング」になってしまったと思います。

また、原作となるいしいしんじの小説は、舞台化もされている、コアなファンがいる作品ではあるのですが、刊行されたのが2001年とかなり前で、今では知らない人もかなり多かったことでしょう。そのいしいしんじは「映画化のお話は以前にもいくつかあったんですが、色々な理由で立ち消えになっていました。今回、シンエイ動画プロデューサーの吉田有希さんと初めてお会いしたとき、吉田さんのトリツカレ方がすごくて(笑)。大切にしてくださる方のところに行けそうだなとホッとしましたね」とも語っています。

つまりは、『トリツカレ男』は「長い時間をかけて最高の形で映画化された」のです。そこまでの作品が、実際に見た人から絶賛の嵐にもなっているにも関わらず、「見る前のキャラクターデザインの賛否」や「公開タイミング」で見られなくなってしまうというのは、とてつもなくもったいないと思います

『トリツカレ男』は、ただでさえ少なかった上映回数が今週末から減らされ、しかも再来週の11月21日には細田守監督作『果てしなきスカーレット』も上映開始となり、さらに見ることそのものが難しくなることも考えられます。

一方で、絶賛に次ぐ絶賛の声がさらに加速すれば、『アイの歌声を聴かせて』などと同様にロングランをする、ずっと愛される傑作として語られ続けることも十分にあり得ると思うのです。

また、『窓ぎわのトットちゃん』『化け猫あんずちゃん』など傑作ぞろいのシンエイ動画制作のアニメ映画はこれからも注目されるべきですし、12月5日公開の『ペリリュー 楽園のゲルニカ』にも大期待できます。
だからこそ、もう一度言います。『トリツカレ男』をまだ見ていない人は、今すぐに劇場上映を確認し、見に行ける回を予約して、最優先で見に行ってください!

※高橋渉監督の高は、はしごだかが正式表記
ヒナタカ
この記事の執筆者: ヒナタカ
映画 ガイド
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。 ...続きを読む
>プロフィール詳細
最初から読む
Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

編集部が選ぶおすすめ記事

注目の連載

  • どうする学校?どうなの保護者?

    「まだ体育館で軟禁されてるの?」役員決めを廃止したPTA、保護者と先生が手にした“穏やかな春”

  • ヒナタカの雑食系映画論

    映画『鬼の花嫁』で永瀬廉が体現する「俺様ではない魅力」とは。『シンデレラ』的物語へのアンチテーゼも

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    江ノ電20年ぶり新車、謎の「1人掛け席」の正体は? 観光サービスではなく「混雑地獄」に挑む苦肉の策

  • 海外から眺めてみたら! 不思議大国ジャパン

    「移民」に冷たいのはどっちなのか? スイスの厳格過ぎる学歴選別と、日本の曖昧過ぎる外国人政策