ヒナタカの雑食系映画論 第186回

映画『8番出口』を見る前に知ってほしい8つのこと。二宮和也が「無個性」を演じる説得力とは

『8番出口』がべらぼうに面白い映画でした! 原作ゲームを遊んでいたほうがいい? 怖いの? という疑問にも答えるべく、魅力や特徴を8つの項目に分けて紹介しましょう。(写真は筆者撮影)

3:「映画館で没入して体験する」作品になっている

ゲームはプレイヤーの操作が内容に影響するインタラクティブなエンターテインメントであり、「ずっと見ることしかできない」“一方通行”の映画とはまったく異なります。
『8番出口』の原作ゲームにはストーリーがなく、「特殊な設定と舞台があるだけ」なので、そのままトレースするだけでは映画にできない、できたとしても30分未満の短編にしかならない、はたまたひどく単調な作品になってしまう危険性もあったでしょう。

しかしながら、本作は「映画館で没入して体験する」映画としての魅力を突き詰めています。例えば、カットをなるべく割らないロングショットが続く撮影と、同時進行に行われていたというこだわりの編集のおかげで、実際に「異様な空間にいる」ような体験ができるのです。

さらに、カメラワークが臨場感たっぷりに工夫されており、「観客はこの目線では異変に気付くのに、登場人物が気付いていない」という場面では、前述した「ずっと見ることしかできない」映画の特徴が、「異変に気づいてくれよ! 後ろにあるよ!」などと思うしかない「もどかしさ」へと変わり、むしろ楽しめるという、やはりゲームとは別ベクトルの(あるいは実況プレイ動画を見ているのにも近い?)面白さが備わっているのです。

また、原作ゲームには「変すぎて笑ってしまう異変」もあるのですが、今回の映画ではその「ネタ」要素はほぼ排除されています。ある種のコメディー的な要素が原作からなくなったことを残念に思う人もいるかもしれませんが、シリアスな物語を成立させる、リアリズムが重要な映画という媒体では、正解だと思えました。

さらには、同じ展開ばかり飽きてしまうこともきっとないであろう、後述する主人公の「気付き」を主体とした物語には確かな感動とメッセージもありますし、「ネタバレ厳禁の大胆な仕掛け」も用意されています。美術や小道具など原作再現の工夫もこれ以上はないもので、失敗作とされる作品もあった「ゲームの実写映画化」の歴史上で、1つの完成系といえるでしょう。

4:「ループもの」の最前線! ほぼ「ハズレなし」のジャンルである理由は?

ホラー映画からさらにジャンルを分けるのであれば、映画『CUBE』『SAW』などに代表される「限定空間からの脱出を目指すソリッド・シチュエーションもの」と、『恋はデジャ・ブ』や『ハッピー・デス・デイ』などの「同じ時間や場所を延々と繰り返すループもの」のハイブリッドといえるでしょう。

特に「ループもの」は、筆者個人は「ほぼハズレなし」、一定の面白さがほぼ保証されているジャンルであるとも思います。「前と同じシチュエーションが続く」奇妙さと居心地の悪さはホラー作品とも相性がよく、そもそもやはり「間違い探し」的なゲーム性を持つ上に、そこから脱出したい登場人物との切実な気持ちにも同調しやすいと、エンタメとして楽しめる「土台」を備えているのです。

直近でも『ペナルティループ』『ファーストキス 1ST KISS』『アンティル・ドーン』とループものの映画が続々と公開されていることも、やはり「ループもの」の型が“鉄板”だからでしょう。

なお、『8番出口』は原作から、映画『シャイニング』のオマージュといえる恐怖シーンがあり、そもそもが「映画らしさを意識した」作品だったのかもしれません。

さらに余談ですが、漫画を原作とした実写映画『九龍ジェネリックロマンス』が、『8番出口』と同日の8月29日より上映されており、こちらも実は「ループもの」の要素を含んでいます。「夏の暑い時期の停滞感」も含めて、「ループもの」の名作『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』をほうふつとさせました。
また、小説を原作とした9月5日公開の『カラダ探し THE LAST NIGHT』も夜の遊園地で高校生たちが“カラダ”を集めるミッションに挑み、殺されると「リセットされる」という、こちらも分かりやすいループもののホラーになっています。

2022年の前作を見ていなくても楽しめる説明もちゃんとありますし、ダウナーなだけでなく「青春の明るさ」も意識した作りもユニークなので、こちらも併せてチェックしてください。
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二宮和也が「脚本協力」をした理由
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