7:テーマとメッセージは「日常の中に潜む違和感や気付き」?
坂田悠人プロデューサーは、4Gamer.netのインタビュー記事で映画に込められたメッセージは「日常のささいな違和感や変化に目を向けてみることで、世の中がどう変わっていくか」であると、劇場パンフレットではテーマに据えたことを「日常の中に潜む違和感や気付き」であると語っています。そのメッセージおよびテーマをストレートに示しているのは、主人公が8番出口に向かうために、ささいな変化も細かくチェックしようとするのに対し、物語の始まりではとあるひどい事態に対して「見てみぬふりをした」という皮肉的な構図です。
その「見てみぬふり」をしてしまうという「罪」は誰にでも日常的に、それこそ「同じことの繰り返しのような生活」にも紛れ込んでいるものです。
でも、実はその「時には見てみぬふりをしてしまうループのような日常」にも、実はどこかに「変化」はあり、その変化に気付き、のちに「本当に大切なこと」のために行動することこそが重要なことではないか……エンタメとして楽しめるだけでなく、そんな学びも得られる物語にもなっていることもまた、称賛したいです。
おまけ:正直気になるところも……?
あえて、気になったことを書くのであれば、とある場面で「さすがに物理的に無理があるのでは?」と思ってしまったこと。演出もシチュエーションも画(え)も感動的かつ迫力があるからこそ、やや説得力に欠けるのはもったいない印象がありました。不条理かつ荒唐無稽な出来事が多い作品だからこそ、「そうではない」要素にももう少しリアリズムを突き詰めてほしかったのです。また、映画の序盤に電車に乗り込む乗客として、とある有名人が映り込んでいるのですが、これをノイズに感じてしまう人もいるかもしれません。ただ、序盤も序盤で物語の流れを断ち切るわけでないですし、話題にするための宣伝手法としても十分に理解できる、多くの人にとっては許容範囲であるとも思います。なお、原作者のKOTAKE CREATEもエキストラとして参加しているそうですよ。
8:実況プレイ動画は実際に遊んでみてからがいいかも?
最後に余談ですが、『8番出口』は有名人の実況プレイ動画も人気を博しており、そちらをまだ見ていないのであれば、先に原作ゲームを自分でプレーするのがおすすめです。なぜなら、原作ゲームのボリュームはとても少なく、初めからプレーしても数時間(慣れれば数十分)でクリアーできる上、異変に自主的に気づく面白さ&怖さのあるゲーム内容も鑑みれば、「実況プレイ動画はほぼネタバレ」と言えるから。映画には登場していない異変もゲームにはたくさんあるので、映画の後にでもぜひ遊んでほしいですし、その後で実況プレーヤーの「リアクション」もまた楽しんでほしいです。
なお、原作ゲームは値段も安く、Switchのダウンロード版は470円で9月14日までのセールでは376円、Steamでは9月12日までのセールで329円となっています。さらに、ゲームの続編となる「永遠に走り続ける電車に閉じ込められている」設定の『8番のりば』も配信中で、こちらは異変がさらに派手かつ恐ろしさも増した内容となっているので、こちらもおすすめですよ。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。



