ヒナタカの雑食系映画論 第179回

『鬼滅の刃 無限城編』で猗窩座の「つまらない話」はなぜ胸に迫るのか。観客自身が“神の視点”を持つ効果

『鬼滅の刃 無限城編』で胸に迫るのは、敵である猗窩座(あかざ)の物語です。そして、「長くて多い」という批判の声も上がっている「回想」は、観客の「神の視点」として必然性があるものだと思えるのです。(写真は筆者撮影)

無限城
写真は筆者撮影
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座(あかざ)再来』は、公開からわずか10日間で動員910万人、興行収入128.7億円という超特大ヒット中。日本での歴代映画ランキングではすでに29位まで登り詰めており、この夏休みを通して、歴代1位記録に向けて駆け抜けていくことでしょう。
劇場版「鬼滅の刃」無限列車編
劇場版「鬼滅の刃」無限列車編

前置き:これからはドルビーシネマ版がおすすめかも!

さらに、8月2日からは入場者特典である、A5サイズの「第3弾キービジュアル イラストボード」が全国300万人限定で配布開始に。リピーターの動員が加速することは間違いなく、実際にIMAX上映の多くが予約時点で満席に近い大盛況となっています。
そこで、筆者個人がおすすめしておきたいのは「Dolby Cinema®(ドルビーシネマ)」。同日8月2日より『鬼滅の刃 無限城編』でもスタートするこの上映方式では、前後左右から音が聞こえる迫力の音響システムもさることながら、「黒」をくっきりと見せる画のコントラストが際立つため、広大で薄暗くも美しい「無限城」での激しい戦いが、さらに「映える」はずです。
ドルビーシネマが導入されているのは全国で10館のみとごく限られていますが、ぜひチェックしてみてください。なお、今回の入場者特典は通常版、IMAX版、ドルビーシネマ版共通で配布されます。

「回想の長さと多さ」には批判の声もあるけれど……

『鬼滅の刃 無限城編』は現時点でFilmarksでは4.3点、映画.comで4.2点などレビューサイトで、アニメ映画史上でもトップクラスの高評価を得ています。しかしその一方で、決して少なくない批判の声が上がっているポイントがあります。それは「回想が多くて長い」ということ。

原作は漫画という媒体で「自分のペースで読める」ため気にならないのですが、時間の流れが一定である映画で、特に今回のようにスピーディーなアクションが見せ場になっている作品だと、どうしても回想シーンで「停滞」している印象を持ち、作中で流れている時間との「ズレ」が気になってしまう原因にもなっていると思うのです。

しかしながら、『鬼滅』という作品そのものを鑑みても、この回想の長さと多さには必然性があり、今作は劇中の「人間」と「鬼」の考えが互いに「交わらない」ことが、より観客の胸に迫る効果を生んでいるとも感じられるのです。その理由を、本編のネタバレありで記していきましょう。
※以下、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の本編のネタバレに触れています。
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猗窩座と炭治郎の主張の「平行線」
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