5:実は過去作の「リベンジ」かも?
最後に、ネガティブな話題になって恐縮ですが、これまでの『ファンタスティック・フォー』の映画作品は、批評的または興行的に芳しくない結果になることもありました。特に評判がよくなかったのは2015年版。Rotten Tomatoesでの批評家の支持率はわずか9%と散々な評価で、興行的にも大失敗となりました。個人的には『クロニクル』で高く評価されたジョシュ・トランク監督ならではの鬱屈(うっくつ)した心理描写が優れていると感じたのですが、意図的にせよ暗い作風になりすぎていたこと、上映時間のほとんどをスーパーパワーを身に付けるまでのドラマに費やしていることなど、不評の理由は理解できます。 対して、2005年の『ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]』は興行的には成功したもの、こちらはライトすぎる物語もあってか批評家からの受けはやはり今ひとつ。2007年の続編『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』と併せて2作品のみでシリーズが打ち止めになっており、やはり良い評価を得られたとはいえません。 そして、筆者の勝手な見方ではありますが、実は今回の『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』は、その『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』の「リベンジ」であるようにも思えました。
なぜなら、「シルバーサーファー」という人気キャラクターが(男性から女性へと変わっているものの)登場することに加え、危機に立ち向かうという物語の軸にも共通点が多いからです。そして何より、キャラクター同士の掛け合いやそれぞれの葛藤が、前作での反省を活かしたかのように、深みを増していると感じたためです。
また、『銀河の危機』では「ミスター・ファンタスティック」と「インビジブル・ウーマン」が「ついに結婚する」ことが物語のメインに据えられていましたが、今回の『ファースト・ステップ』では夫婦になった2人に「子どもができた」ことが物語で特に重要になっています。もちろん演者や世界観も異なる別の作品ではあるものの、『銀河の危機』からキャラクターの関係性が「先に進んだ」ような感慨深さもありました。
そして、今回の『ファースト・ステップ』はRotten Tomatoesでの批評家の支持率が現時点で88%という、『ファンタスティック・フォー』の映画作品の中でぶっちぎりNo.1の評価になっていることはうれしい限り。前述してきた通り「レトロフューチャーなルック」や「いま作られるヒーロー映画としての意義」があってこその成功といえるでしょう。
ぜひ、予備知識ゼロでも、今までの『ファンタスティック・フォー』を知っている人も、劇場でご覧になってほしいです。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。