フランスで「自己啓発本」は浅いと思われるワケ。今フランス人に読まれている「日本の書籍」の特徴

日本の書籍『嫌われる勇気』や『ノルウェイの森』は、海外でも翻訳されベストセラーになりました。そんな中、フランスの書店では、日本人の「内面世界」にフォーカスした書籍が存在感を強めています。これらの動向を現地からリポートします!

フランスでは、自己啓発本は“浅い”と思われている?

セルフケアのコーナー
「セルフケア(prendre soin de soi)」の書籍コーナー
「サルトル」や「カミュ」に代表される哲学は、フランスの知的伝統として非常に大きな存在。前述したようにフランスでは、「思想・哲学」の方が重視されているので、「自分を変える」「成功する」といった自己啓発本は、一部の層から“浅い”“アメリカ的”などとみなされることがあります。

そのため、書店側も「自己啓発(développement personnel)」というコーナー表示を避けます。代わりに置かれるのは「セルフケア(prendre soin de soi)」や「ウェルビーイング(Bien-être)」といった棚名。確かに、これまでもフランス人の口から「自己啓発(développement personnel)」という言葉を聞いた記憶がありません。
 
ということで『IKIGAI』のほかにも、日本的な「思想」をテーマにした書籍がここ数年でじわじわと増えています。

 『孫悟空のように考え、行動せよ』

ドラゴンボールの本
『Agir et penser comme Son Goku』Colas Tran著
今回発見したのが、『Agir et penser comme Son Goku(孫悟空のように考え、行動せよ)』という1冊。フランス人作家コラス・トラン(Colas Tran)による人生のハウツー本です。
Agir et penser comme Son goku: Battant, obstiné, loyaln naif, candide, optimiste, combatif, intuitif, enthousiaste
Agir et penser comme Son goku: Battant, obstiné, loyaln naif, candide, optimiste, combatif, intuitif, enthousiaste

こちらは日本発の漫画『ドラゴンボール』の主人公・孫悟空を、単なるヒーローではなく“人生のロールモデル”として捉えた本です。例えば、

・子ども心を忘れないこと
・ちゃめっ気を大切にすること
・偏見や軽蔑なしに人と向き合うこと
DRAGON BALL モノクロ版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
DRAGON BALL モノクロ版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

など、悟空の生き方に学べる“哲学”を、日常生活にどう生かすかがつづられている内容です。

孫悟空がこうしたハウツー形式で書籍化されていることに驚きましたし、日本漫画のキャラクターが“哲学的存在”として捉えられている好例だと思いました。シリーズ本としては、『ワンピース』から着想を得た『Agir et penser comme Luffy(ルフィのように考え、行動せよ)』もありました!
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フランスで読まれる“穏やかな”日本の実用書
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