「運動会」は日本だけ? 部活動も、体育館も存在しないフランス人の「体育」に対する意外な価値観

日本の学校で行われている運動会は、実はフランスにはありません。それだけでなく、「全員が参加する行事」や「かけっこで順位を競う」という文化も全くないのです……。フランス人の体育に関する考え方は日本人とどう違うのか、在住者が詳しくご紹介します!

フランスの小学生
パリの小学生たち(写真は筆者撮影、以下同)
小学校の頃に経験した「運動会」。親も先生も一丸となって、クラス対抗で応援し合う。この運動会は、日本人にとっては“通過儀礼”のような存在かもしれません。

「楽しみ」だった人もいれば「憂鬱(ゆううつ)」だった人もいる、色々な思い出が交錯する運動会ですが、皆で協力して何かを成し遂げるというイベントは、日本の文化そのものを象徴しているとも感じます。

運動会は、日本限定の行事?

そんな運動会が「日本だけのもの」と筆者が知ったのは、実は、フランスに住んでからのことでした。フランスにも体育の授業はあるものの、運動会というイベントが全く存在しないのです。

現地の友人に「フランスの学校では運動会はないの?」と尋ねてみても、「スポーツの時間はあるけど、親が来てお弁当まで用意する行事は聞いたことがない」と首を傾げられる始末。では、フランスの体育とはどんなものなのでしょうか? 

話を聞いているうちに、その背景にある“フランスの超個人主義”も垣間見えてきました。

フランスの学校には体育館がない!

フランスの小学校
小学校の校庭はコンパクト
フランスの小学校から高校までは、「Éducation Physique et Sportive(EPS)」と呼ばれる体育の授業が週に2〜3時間、必修とされています。

体育の授業に関して、フランスと日本が似ていると思うのは、「スポーツを種目ごとに学ぶ」ところでしょうか。ただ、「全員で一緒に走る」といった“協調性のある動き”は、フランスではほとんど求められないようです。

筆者がもう1つ驚いたのは、そんなフランスの学校に「体育館とプールが存在しない」こと。校庭や運動場はあるものの、生徒数を考えるとその規模はかなりコンパクトです。つまり、体育館のような施設は、街に1つか2つある程度。学校で使う場合には、子どもたちもそこまで移動しなければなりません。

しかもその体育館は、学校専用ではなく、地域のスポーツクラブが使ったり、消防隊の訓練に使われたりと、街の中で“シェアする場”として運用されています。

さらにフランスの体育館は、災害時の「避難所」として機能することもありません。運動会がないことも驚きですが、体育館の存在意義が日本と全く異なっている点についても、ちょっとしたカルチャーショックを受けてしまいました。ちなみにフランスで自然災害が起きた場合には、学校ではなく、シティセンターや公的施設に避難するそうです。

スポーツをするなら学校外で

街にある“共同の”運動場
フランスの街にある“共同の”運動場
ということで、フランスにおける体育の授業は、「スポーツにはどんな種目があるのか」という“基本を知ること”に重点が置かれている印象です。

例えば、フランス人の小学校では、ドッジボール・トランポリン・水泳などを学ぶそうです。もちろん、このプールも学校内にはないので、地域の公共施設に出かけて授業を受けることになります。

中学校や高校では、バドミントンやサッカー、卓球、そしてダンスなど、内容はやや本格的になります。中には「プランニング(作戦・戦術の理解)」を重視する授業もあるそうで、実技よりも“考える体育”に近い印象です。

ただし、これらはあくまで“基本”の範囲。もしサッカーなど特定のスポーツが得意だったり、もっと本格的に取り組みたかったりする子どもは、学校ではなく地域のスポーツクラブに「個人的に」通います。

実際、週末には地元の柔道クラブやサッカークラブに通う子どもたちを本当によく見かけます。所属クラブによっては試合や遠征もあるそうで、地域の仲間と一緒に全国を回ることもあるとのこと。学校側はそこに全く関与しておらず、完全に家庭とクラブの責任で運営されています。
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部活動もなし。個人のスポーツ活動に学校はノータッチ
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