放課後の「部活動」もない

ただ、2024年に行われたパリ・パラリンピックに行った際は、先生に引率された小学生の団体と何組もすれ違いました。こうした見学はむしろ盛んなほうで、「学校行事の一環」として公式に行われているようです。
一方、子どもがどんなスポーツに挑戦するかは「本人と各家庭の判断」。学校側は、授業以外は完全にノータッチです。一体感を大切にする日本の学校文化と比べると、かなりサッパリした印象がありますね。
「学校の活動に大きな比重を置く」日本と、「学校は勉強しに行くところ。それ以外は個人の選択」というフランス。フランス流“個人主義”の考え方は、すでにこの時点で始まっているのだと改めて感じました。
「運動ができる=モテる」は日本だけ?
運動会がないということは、運動会にまつわる「子ども社会のヒエラルキー」も存在しないことになります。こうした行事では、徒競走でいちばん速い子がクラスのヒーローになったり、運動が苦手な子が肩身の狭い思いをしたりする場面が少なからずありました。ところがフランスでは、運動の得意・不得意が子どもの立ち位置に直結することは、あまりないようです。人気があるのは、話が面白い子や、おしゃれな子。スポーツもモテる要因の1つにはなり得ますが、それ以外の「個人のパワー」が大きく関係しているように思います。
こうしてフランスと日本の学校文化の違いを知っていくと、その先にある“大人社会”の価値観を理解する手がかりになるようで、大変興味深いです。今回の体育のテーマからも、フランス人が「個をいかに大切にしているか」が分かったような気がします。
この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。