もともとベジタリアンやヴィーガンの人口が少なくなかったフランスですが、近年ではベジタリアンではない人たちも、例えば週に1度といった頻度で、植物ベースの食事を取り入れる習慣が広がり始めているのです。
その波は、もはや個人の選択にとどまりません。学校給食で「週に1度のベジタリアンデー」を導入していたり、スーパーではベジタリアン専用コーナーが拡大されていたりと、「社会全体」としての受け入れがどんどん進んでいる印象です。
ベジタリアン食が一般化している理由

環境問題は、「肉を食べない」「消費量を減らす」という選択の大きな要因になっています。畜産業は温室効果ガスの排出源ともされることから、多くの人が食生活を見直すきっかけの1つにつながりました。
もう1つ支持されているのが、「動物の権利や福祉」にまつわるテーマ。食肉の「トレーサビリティ(どこで、どのように作られたか)」に関心を持つ人が大変多く、動物の扱いに対して疑問や共感を持つ声が、フランス社会の中でより大きくなってきています。
学校給食では週に1度のベジタリアンデーを導入

対象は幼稚園から小学校、中学校、高校までの全ての公立校。自治体によって頻度は異なるものの、これらの学校では、肉や魚を含まないベジタリアンメニューを週に1度以上提供する必要があります。ただしヴィーガンではないため、乳製品と卵はメニューに含むことが可能です。
ベジタリアンデーが広がった背景には、「野菜や果物を含むバランスの良い食生活が、低所得層の家庭では普及しておらず、裕福な層に偏っている」という現状がありました。
つまりベジタリアンデーの目的は、学校給食を通して全ての子どもに平等な「食の機会」を保障すること。また、高価な肉類を減らすことで実現するコスト削減、そして環境的・社会的責任といったさまざまな理由から、この導入が決定されました。
メニューも豊富で、一例では「野菜のクスクス」「豆腐のラビオリ」「大豆ステーキ」などが提供されています。これに対し、現在でも賛否はあるものの、「毎日繰り返す食事のうち、1食がベジタリアンになるのは構わない」といった肯定的な声がほとんどのようです。