子育て方針「中学以降は本人の自由にさせる」
相手を尊重する考え方は、夫婦間だけで成立するのではありません。オトクサさんは子どもの意志も尊重していて、中学受験に関して子どもが「やらない」と決めたらその気持ちを優先させると言います。これまで育てたお子さんが「中学受験をやめる」と宣言した際は、受験に向けた伴走をやめた時期もありました。
「通塾なしで開成合格と伝えると、教育パパを想像されるのですが、特に子育ての方針は設けていないんです」とオトクサさん。幼児教育にも熱心ではなく、子どもたちは幼い頃からゲームやiPadに触れられる環境だったそう。
「あえて子育て方針を挙げるとしたら、『中学以降は本人の自由にさせる』くらいですね。もちろん、学歴はあった方がいいと思いますけど、『いい大学を出て、いい職に就いてほしい』と願うのは、子どものためというより親が安心したいからだと思うんです。
世の中のことをあまり分かっていない小学生の間だけ僕たち保護者がサポートして、基礎をしっかりと固める。それ以降は本人の好きなように進んでほしいです。
実際に中学や高校へ進学した長女や長男は自由にやっています。大学受験する際も、特に話し合わないでしょう。本人が進路を決めて事後報告を受けるんじゃないでしょうか」
長男が中学へ進学してから、オトクサさんは勉強面について一切口を出していないそう。その理由を、「中学受験を通じて、子どもに任せても安心という信頼関係が築けたから」と語ります。
「中学生になった子どもと一緒に勉強したり会話したりすることが楽しいと思える家庭もあると思うんです。その思いを否定するつもりはありません。うちは中学生になってまで勉強の話はしたくないということが、親子それぞれの理想だったというだけです」
一人の人間として互いを尊重し合う考え方が、家族の争いごとを避けるヒントにつながるのかもしれません。
オトクサさん プロフィール
1981年大阪府大阪市出身。小学生の時、自ら志願し 中学受験に挑戦し、私立の中高一貫校である清風中学校へ進学。中学・高校は塾に通わずに大阪大学に現役合格。現在、妻と8人の子どもとともに東京で暮らしている会社員。長男が塾なしで中学受験に挑戦する様子をまとめた新刊『通塾なしで開成合格!中学受験おうち勉強法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)では、子どもたちが自ら学び進めるための取り組みを、大家族ならではの日常を交えてわかりやすく伝えている。
この記事の執筆者:結井 ゆき江
フリーランスの編集者・ライター。中学受験雑誌の編集者として勤務した後に独立。小学校で発達障害グレーゾーンの児童をサポートした経験から、教育分野を中心にライターとして活動する。



