完全体カムバックへの期待と葛藤
ゆりこ:今年2月にCBXのファンミーティングに行ってきましたが、3人ともお客さんを「EXO-L」「エリ」って呼び掛けていました。つまり目の前にいるのは「EXOファン」であることを分かっているし、自分たちも「EXOメンバー」であるということ。古巣に対し改善してほしい、譲れない部分はあれど、EXOを辞める気はないのではないでしょうか。そしてリーダーのスホさんは至る所で「EXOはカムバックをする」と言ってくれています。さすがリーダー、ファンにとっても心の支え(涙)。チャニョルさんと今年1月の「SMTOWN LIVE 2025 in SEOUL」に出演した際のインタビュー動画でも「セフンとカイ(現在召集解除済み)が戻ったら新しいEXOの姿をお見せします」「ファンミーティングもコンサートもしますよ」って。D.O.さんもインタビューの中で「完全体の活動については心配しないでください。今年中(のカムバック)は難しくとも今年から準備して、できる限り早く出したい」と明言してくれています。最近ソロでカムバックしたKAIさんもグループ活動を期待させてくれる発言をしています。ただ、もうここまでくると「なるようになる」「信じて待つしか選択肢がない」の域。矢野:できないならできない、するならすると、はっきりとした答えを知りたくなるのは人間の性です。ただ、それがしたくてもできない“大人の事情”があることをファンは分かっているから、見守るしかないわけですよね。そんな中、メンバー本人たちがグループ活動を諦めていないと名言してくれれば、ファンの心は救われます。いつかグループとして帰ってくるその日を楽しみに待ちたい。
ゆりこ:そして、これは淡い期待も込めて、レイさんのお話もしておきたいです。前回のメンバー紹介ではお話ししませんでしたが、唯一の中国人メンバーであるレイさんは正式には脱退を発表していないのです。2017年以降は中国での活動が中心になりましたし、曲も『Don’t fight the feeling』を最後に参加していません。2022年にSMとの契約も終了していますが、その発表コメントにもグループ脱退の文字はなく、最後は「EXO サランハジャ(愛そう)!」というグループのスローガンで締めくくっています。 矢野:ネット上で調べてみると、SMとの契約終了の時点で、「実質的には脱退している」という認識の人もいるようです。ファンによっても捉え方は違いそうですね。
ゆりこ:私の周りでも意見が分かれるところです。今年2月に行われたレイさんのソロコンサートでは『Growl(ウルロン)』『CALL ME BABY』『Baby, Don't Cry』を披露していますし、チャニョルさんのコンサートにはセフンさんと一緒に見に来ていました。それに2023年のクリスマス時期に再ブームとなった『The First Snow』の“初雪チャレンジ”も、最初にダンス動画をSNSに投稿したメンバーはレイさんです。私は今も彼はEXOメンバーだと思っていますし、いつかふっとグループ活動に参加する日があるんじゃないかってひそかに期待しています。 矢野:現在SMとは契約していないメンバー、葛藤中のメンバーも含めて全員が集まる日が来たら感動もひとしおですよね?
ゆりこ:狂喜乱舞しますね。想像するだけで涙が出そう。メンバーそれぞれに抱えるものや古巣に対する怒りや不満はあれども、EXOに対する思い入れは強いと信じています。一方でソロ活動を邪魔されたり、周年イベントのオファーが来なかったり……ということが事実であるなら、該当メンバーの負った傷は相当深いでしょう。その部分のケアは必要だと思います。「みんなそろったグループ活動が見たい」のはファンとしての本音だけれど、誰かが精神的負担を抱え、納得できぬまま無理やり参加させられることは望んでいないです。SUPER JUNIOR、SHINee、そして最近Red Velvetの一部メンバーもSMとの専属契約を終了しました。でもグループには残り続ける。こういった流れは続くと思います。
矢野:今や、誰かが事務所を出たら即脱退、または解散という時代ではなくなってきているのを感じます。世の会社員だって、そうかもしれません。円満退社が前提となりますが、辞めた会社ともゆるくつながって、個人事業主としてお仕事をもらったり、プロジェクトに参加し続けたりする人も増えています。
ゆりこ:SUPER JUNIORのようにメンバーが独立しても、以前とさほど変わらずに活動できている例もあるので、何とも言い難いのですが……SM側のシステムをアップデートすべき段階に来ていると感じます。長年貢献してきたベテランアイドルのキャリアをどう考えるのか、どんな道を提示するのか。それは老舗芸能事務所としての責任でもある。
矢野:EXOとSMだけではなく、ここ最近アーティストと事務所が契約問題でもめるケースが目立っています。K-POPが発展し1つの大きな産業となった今、転換点を迎えているのかもしれません。アーティストも事務所も、そしてファンも三方よしの活動スタイルが見つかるといいのですが……。
ゆりこ:そして、別視点のめちゃくちゃシビアな話。K-POP業界は生き馬の目を抜くような世界ですよね。最近「뭉치면 살고 흩어지면 죽는다(モンチミョン サルゴ フトジミョン チュンヌンダ/団結すれば生き残れるが、バラバラになると死ぬ)」という韓国のことわざを教わったのですが、その通りになるケースもあります。EXOメンバーは実力派ぞろいだからソロになっても強い。しかしながら、やはりみんなが集まったときの存在感や影響力は桁違いです。経済的インパクトだって大きいでしょう。
矢野:EXOはメンバーの脱退もあり、入隊の時期もあり、グループ全体の活動が止まりがちゆえ“少し前に大活躍していた”というイメージがあるかもしれません。でもまだまだこれからが見せ場だと。
ゆりこ:“昔はすごかった”というイメージ、ファンとしてはかなり悔しいので、これから“帰還した皇帝の姿”を見せてほしいです。K-POPグループには存続をかけて目先の数字や順位にこだわらざるを得ない時期があります。しかしEXOはもうその段階を卒業しているんじゃないかな。末長く名曲を出し続けて、新しいカルチャーを作り続けていくネクストステージに立っていると思います。
矢野:酸いも甘いも経験し成熟してきたからこその魅力が見られるのではないかと期待しています。
ゆりこ:最新、といっても2023年発売のアルバムですが『EXIST』はEXO史上最高傑作と言えるほどの名盤ですよ。全然衰えてなんかいなかったし、私は『Growl(ウルロン)』が入っている伝説の1stリパッケージアルバム『XOXO』よりも聞き込みました。だからまだ過去形で語るグループではないと胸を張って言いたいです。
矢野:“すごかった”ではなく、今もこれからも現在進行形で“すごい”彼らの活躍を心から期待しています。EXO サランハジャ!
【ゆるっとトークをお届けしたのは……】
K-POPゆりこ:韓国芸能&カルチャーについて書いたり喋ったりする「韓国エンタメウォッチャー」。2000年代からK-POPを愛聴するM世代。編集者として働いた後、ソウル生活を経験。
編集担当・矢野:All Aboutでエンタメやメンズファッション記事を担当するZ世代の若手編集者。物心ついた頃からK-POPリスナーなONCE(TWICEファン)&MOA(TOMORROW X TOGETHERファン)。



