世界を知れば日本が見える 第68回

「日本の万博は使い捨て」インバウンドが大阪万博に抱く不満とは。“ディズニー級”の質を求めるのは酷?

2025年4月に開幕した大阪・関西万博。見応えのある展示が集まる一方で、予約制の不便さや施設の簡易さなどに対する海外来場者の不満の声も散見される。特に、インバウンドの外国人が感じている不満とは? (サムネイル画像:All About ニュース編集部撮影)

日本の万博は“使い捨て”のような印象

日本館
日本館(画像:All About ニュース編集部撮影)
さらには、万博会場が全体的に万博のために造られた「簡易」なものという印象だ。「2020 ドバイ万博」はスマートシティとして再利用されることが前提となった設計だったが、日本の万博はあくまで一時的な造りで「使い捨て」のような印象を受けたという声があった。
 
万博を建設した夢洲(ゆめしま)は、2030年にカジノリゾートを開業する予定になっているため周辺のインフラは今後も活用されるが、万博会場自体は一時的に建設されたと考えてしまうのが自然だろう。

万博に「ディズニーランド級の質」を求めるのは酷?

さらに細かい点だが、例えば以下のような不満がインバウンドの外国人からは出ている。
大屋根リング
リング状の屋根は雨風をしのげない? (画像:All About ニュース編集部撮影)
一部のレストランでは予約が必要でそれすら知らされていなかったり、十分な日陰や雨除けがない。壮大なリング状の屋根も、風雨をしのぐには不十分。またゴミを捨てる場所を見つけるのが困難だったとの声も。
 
YouTubeなどSNSを見ていると、「2週間後に行くので楽しみ!」「7月に万博に行くので待てない!」といったコメントも多く見受けられる。万博は、ディズニーランドやユニバーサル・スタジオのような大人気の遊園地ではないので、一時的なイベントである万博に同じようなクオリティーを求めるのは酷かもしれない。

インバウンドの外国人が感じるストレスと日本人来場客が感じるストレスはあまり変わらないように感じる。まだ先の長いイベントなのでできる限りストレスをなくす努力をしてほしいと願う。
 
この記事の筆者:山田 敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。

X(旧Twitter): @yamadajour、公式YouTube「スパイチャンネル
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