多国籍メンバー、コンセプト戦略、ティザー考察…K-POP業界の革命児「EXO」が“変えた”もの

K-POP業界にさまざまな影響を与えてきた「EXO」。多国籍メンバー構成、ティザー考察など、後続グループにも大きな影響をもたらしたその革新的な功績に迫ります。※サムネイル写真:YONHAP NEWS/アフロ

グループの個性と世界観を作る「コンセプト」の重要性を再認識させたEXO

ゆりこ:BIGBANG、2NE1、少女時代にSHINee、Wonder Girlsや2PMもかなりコンセプチュアルなグループだと思いますし、楽曲ごとにダンスからビジュアルまでテーマも一貫していて明確でした。当時からそういった概念はしっかりありましたよ。ただ、EXO以前と以降では結構変化があったと感じる部分です。

矢野:確かに少女時代といえばカラフルなスキニーパンツや、脚の動きが特徴的なダンス、かわいく健康的なイメージが思い浮かびます。あれもコンセプトの一環といえばそうなのか。

ゆりこ:実はね……まだ矢野さんに伝えていないEXOの(黒?)歴史があるのですよ。言おうか迷ったのですが……。

矢野:え? 何でしょう。気になります。

ゆりこ:デビュー時のコンセプトがなかなか奇抜だったのです。なんと「太陽系外惑星(EXOPLANET)からやってきた超能力者たち」という設定でデビュー。「宇宙から地球に流れ着き、記憶を失った少年たちが己の秘めたる超能力に目覚める」なんていうストーリーまでありまして。

矢野:えっと……あまりにも想像の斜め上をいく設定過ぎて一瞬フリーズしてしまいました。記憶を失って超能力に目覚める、よくアニメで見るコンセプトです。

ゆりこ:トンチキソングは免れていても、トンチキコンセプトからは免れられなかった(笑)。もしかしたら興味のある人もいるかもしれないので、超能力設定の一覧を記載しておきます。
【EXOデビュー時の「超能力」設定一覧】
EXO-K
・スホ(水を操る)
・ベッキョン(光を操る)
・チャニョル(火を操る)
・D.O.(力をつかさどる)
・カイ(瞬間移動)
・セフン(風を操る)

EXO-M
・シウミン(氷結させる)
・ルハン(念力で物を動かす)※
・クリス(飛ぶ)※
・レイ(治癒する)
・チェン(稲妻を操る)
・タオ(タイムコントロールする)※
※脱退メンバー
矢野:ここまでしっかり設定されていたとは。水や火などの物体はもちろん、時間さえも操れてしまうのですね。最強過ぎます。こんなチート級の能力を備えたグループに誰が勝てるでしょうか(いや、勝てない)。

ゆりこ:つい黒歴史だとかトンチキコンセプトだとか言ってしまいましたが(猛省)、しっかり練られた設定ではありました。EXO-KとMのメンバーの“パワー”が対で呼応するものになっていて、例えばKのスホさんの「水」とMのシウミンさんの「氷結」。“対の存在”が同じ歌を韓国語と中国語で歌いながら次第に互いの存在に気付いていく、というストーリーに基づいています。つまり一見風変わりなコンセプトが2つのグループをつなぐ役割を果たしていたということです。この強烈なコンセプトをスタートに、メンバー脱退によるグループの構成変更も経てEXOはどんどん「コンセプト」を変化、進化させていきます。その中には今や若手アイドルの中の“定番”となっているものもありますよ。

矢野:てっきりデビュー直後のインパクトを強めるための、いわば付け焼き刃的な設定かと思いきや、その裏には後に続くストーリーとしっかりとした狙いがあったのですね。EXOが生んだ“定番”コンセプトといえば、どのようなものがありますか?

ゆりこ:初期の代表的なものは『Growl(ウルロン)』の「制服コンセプト」です。今や渦中の人物となってしまいましたがNewJeansのプロデューサー、ミン・ヒジンさんがSMのクリエイティブディレクターだった時代の代表作であり功績の1つですね。知っている人も多いかと思います。
矢野:ミン・ヒジンさんはかつてインタビューで『Growl(ウルロン)』の学生服について、「学生服は、一生のうちで着られるのが一瞬という特別な服。若者の“トレードマーク”とも言える制服を着てタフなダンスを踊ったら、誰もが気に入るんじゃないかと思った。実際、EXOには擦れていない美しさがあった」(※1)と語っていました。

ゆりこ:おそらく私が知らないだけで、きっとEXO以前にも制服を着て踊った韓国アーティストがいることでしょう。しかし、1つ言えるのは『Growl(ウルロン)』以降、男女共に制服を着て踊るK-POPグループが急増したということです。男女問わず後輩グループたちが雰囲気を変えたり、独自の色を加えたりしながら発展させていきました。決してEXOのまねだとか、そういう次元の話ではありません。もはや“K-POPカルチャー”の1つですよね。

矢野:K-POPといえば!というくらい、今や多くのグループが取り入れていますよね。NewJeans、TWS、RIIZEなど……制服コンセプトを採用しているK-POPグループを数えたらきりがありません。

ゆりこ:そして2015年の『LOVE ME RIGHT』時に着ていたアメフトのユニフォーム、「スポーツコンセプト」もEXOが改めての火付け役かもしれません。以降、さまざまな後輩ボーイズグループが取り入れています。1990年代にまで遡ると彼らの先輩グループH.O.T.もスポーツをテーマにしたミュージックビデオ(以下、MV)を撮っているので、言ってみれば“SMの伝統”の延長線上にあるのかもしれない。NCT Uの『90’s Love』はアイスホッケーのユニフォームでしたが、彼らは独自のカラーが出ていて、まさに“進化系”でした。とても好きなMVです。
矢野:SM所属アイドル以外にも広がっていて、例えばTOMORROW X TOGETHERのバレーボール、ENHYPENのラグビーなど。爽やかさや青春感はスポーツコンセプトならではでしょうか。
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単なる予告にあらず!? ファンによる「考察文化」を定着させたEXOのティザー
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