小1の壁は? 子なしは? 4月に施行された育児・介護休業法の改正ポイントと、SNSで語られる本音と課題

2025年(令和7年)4月から施行された「改正育児・介護休業法」。どのような点が変わったのでしょうか。今回は「育児休業法」から改正のポイントとネットの賛否の声を取り上げます。

2024年5月に公布され、段階的に施行されている改正「育児・介護休業法」。2025年4月1日にその一部が施行されました。

この改正は、男女ともに仕事と育児・介護を両立できるよう図るものであり、特に男性の育休取得率については、政府が次のような目標を出しています。

【政府目標】
▶2025年までに男性育児休業取得率を30%へ
(令和元年12月に閣議決定された「第2期『まち・ひと・しごと・創生総合戦略』」より)

▶国・地方の公務員(一般職・一般行政部門常勤)の男性育児休業取得率を
・2025年までに1週間以上が85%へ
・2030年までに2週間以上が85%の取得率へ
(令和5年12月に閣議決定された「こども未来戦略」より) 
育休を取得する男性
男性の育児参加の促進に期待
仕事を続けたくても子育てとの両立が難しく、転職・退職にいたるケースは少なくありません。改正により多様な働き方と男性の育児参加の促進が期待されます。

「子の看護休暇」の範囲が小3修了までに拡大 

改正後は、どのような点が変わるのでしょうか。

1つは、子どもの看護休暇の見直しです。対象となる子どもの範囲が「小学校3年生修了まで」に拡大。取得事由に「感染症に伴う学級閉鎖など」「入園(入学)式、卒園式」も含まれるようになりました。それに伴い、名称も、「子の看護休暇」から「子の看護等休暇」へ変更します。労働者側の条件では、「週の所定労働日数が2日以下」以外は全て適用されることとなりました。
改正育児休業法で変わる「子どもの看護休暇」
改正育児休業法で変わる「子どもの看護休暇」(厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイント」より筆者が作成)
注意すべき点は、授業参観や運動会といった学校のイベントは取得事由として認められないこと(ただし、企業の独自判断で含められる可能性はあり)。また、看護休暇の取得可能日数は1年間に5日、子どもが2人以上は10日のまま変更ありません。
 
このほか、残業免除は3歳未満までが対象だったのに対し、改正後は小学校就学前まで範囲が拡大。3歳未満の短時間勤務制度について、テレワークも選択できるよう事業主は努力義務化されました。
 
育児休業取得状況の公表義務は、従業員1000人超の企業が対象だったのが、従業員数が300人超の企業までに変更されています。

2025年10月1日から施行される「柔軟な働き方を実現するための措置等」

柔軟な働き方を実現するため、2025年10月1日からは3歳から小学校就学前の子どもを養育する労働者に対し、事業主は次の5つから2つ以上を実施するよう育児休業法に明記されます。労働者はそのうち1つを選択して利用します。
 
1. 始業時間などの変更
2. テレワークなど(月に10日以上)
3. 保育施設の設置運営など
4. 養育両立支援休暇の付与(年に10日以上)
5. 短時間勤務制度

子どもが生まれた労働者に個別で意向確認を

「妊娠・出産などの申し出があった時」と「子どもが3歳になる前」には、労働者に個別でヒアリングすることが事業主に義務化されます。

【ヒアリングする内容】
・勤務時間帯
・勤務地
・両立支援制度などの利用期間
・両立のために就業の条件など
 
これは育休の取得率にも影響を与えるのでしょう。
 
「妊娠・出産などを申し出た労働者に、個別の制度周知・休業取得の意向確認をしたか」調査結果を見ると、正社員・職員に対して意向確認を行った企業は「1001人以上の従業員規模」で93.9%、「501~1000人」で92.7%、「301~500人」で87.6%、「101~300人」で77.3%、「51~100人」で52.8%と、従業員規模が小さくなるにつれて下がることが分かっています(「令和4年度 仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」より)。
 
今回の改正により、この数値が大きく改善されることが期待されています。
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【SNSの声】育児休業法改正で、子育て環境はどう変わった?
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