ヒナタカの雑食系映画論 第158回

『ナタ 魔童の⼤暴れ』はなぜ最も売れたアニメ映画になったのか。見る前に知ってほしい3つのこと

アニメ映画世界歴代興行収入1位を樹立した中国のアニメ映画『ナタ 魔童の⼤暴れ』は、その評価もアニメ映画史上最高クラス。ここまでのメガヒットとなった理由と、事前に知ってほしい3つのことをまとめてみましょう。(画像出典:プロデュース&製作:可可⾖動画 彩条屋影業)

まとめ:前作を見る手段がないのは残念だけど、予習復習できる作品も

ここまで本作を絶賛しましたが、それでもやはり「今の日本では前作を見る手段自体がない」というのは残念なところ。

筆者は後追いで前作を鑑賞することができたのですが、ナタがいかに「悪魔」と呼ばれ人々から忌み嫌われていた(本人も悪辣な行動をしていた)か、ゴウヘイとどのような過程で友情が育まれていったのか、それを知っていれば今作の感動はさらに増していたと思えるので、もったいなくも感じてしまうのです。

とはいえ、予習と復習がまったくできないということはありません。実はナタが登場する複数の作品が、日本でも簡単に見られます。一挙に紹介しましょう。

『封神演義』(日本の漫画):キャラクターの特性は異なるものの、ナタこと哪吒(ナタク)や、申公豹(シンコウヒョウ)が登場。ナタの両親の描写との違いを見比べて見るのも面白いかもしれません。

・『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』(中国のアニメ映画):ナタがかわいらしい男の子のキャラクターとして登場。日本でも絶賛の口コミが寄せられ2020年に日本語吹き替え版がヒット。続編映画の2025年の公開や、Webシリーズの日本語吹き替え版の制作も決定しています。
 

『ナタ転生』(中国のアニメ映画):ナタの生まれ変わりである青年が、3000年前の因縁の解決を迫られる物語。「スチームパンク」と「サイバーパンク」の要素を併せ持った作品で、ド迫力のバイクレースが見ものです。
 

『ヨウゼン』(中国のアニメ映画):2025年3月21日より日本で劇場上映中。『封神演義』に登場する「楊戩(ヨウゼン)」を主人公に迎えた『カウボーイビバップ』のような「SF世界での賞金稼ぎもの」。こちらもアクションがハイクオリティーで、愛憎入り交じる師弟の関係が描かれます。

「Aぇ! group」の佐野晶哉を筆頭とした豪華キャストの日本語吹き替え版が絶品。ナタは本編に登場していないように思えますが、エンドロールでは……?
 

これらに加えて、日本でも前作『ナタ 魔童降臨』が、映画館や配信で気軽に見られるようになってほしいところです。

それでも、しつこいようですが、「前作を見ていないから」といって今作をスクリーンで見ないというのはもったいなさ過ぎるということも、もう1度申し上げておきます。

前述してきた作品の魅力は、今作からでも十分過ぎるほどに楽しめますし、何よりこの世の全てのアニメ映画でもっとも大ヒットした理由に納得できるクオリティーの高さ、特に中国アニメの頂点となるバトルアクションを隅々まで堪能できるのですから。

『ナタ 魔童の⼤暴れ』は、もう「これを映画館で見ずして何を見るのか」という勢いで、ぜひ最優先で足を運ぶことをおすすめします。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
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