アマゾンの企業ポリシーから「黒人の平等」「LGBTQ+の権利」が消える
このほか、DEIの施策縮小を発表した企業はほかにもある。アメリカの小売大手ウォルマートは、取引先企業を評価する際に、性別や人種を考慮するよう指導する取り組みを終了すると発表した。しかもウォルマートは、企業をLGBTQ+の「受容度」で評価する国際的人権団体ヒューマン・ライツ・キャンペーンの年次ベンチマークの調査からも撤退すると述べている。
また、オンライン通販大手アマゾンも、トランプ政権発足を受けてDEIを重要視しない方針に舵を切っている。同社は従業員向けのメモの中で、DEIに関連する「時代遅れのプログラムと文書を段階的に廃止」して、2024年末までにそのプロセスの完了を目指していると述べている。すでに「黒人の平等」「LGBTQ+の権利」といった文言が企業ポリシーから消えているという。
元々、自動車大手フォードやバイク大手ハーレー・ダビッドソンなどは、大統領選真っただ中の8月ごろからトランプ支持と相まってDEIの廃止に向けた調整を行っている。
DEI廃止は日本企業にも波及するのか
こうした流れは日本にも来るのだろうか。おそらくただちに日本企業から自発的にDEIなど少数派への配慮方針が撤廃されることはないとみられる。ただアメリカで多国籍企業などがDEI廃止の方向に動くことになれば、その方針は日本の支社などにも波及してくる可能性はある。メタのように、取引先にも働きかけるとなれば、関連企業は無関係ではいられない。トランプ大統領は、1月30日(日本時間)に首都ワシントン近くの空港で発生した旅客機と軍のヘリコプターの激突事故も、アメリカ連邦航空局(FAA)がDEIを重視した雇用を行っているため、管制官などに“能力の高い”職員が就いていないと批判して大きな騒動となっている。
トランプ大統領は今後4年でこの主張を繰り返していくとみられるが、世界がその動きにどう反応していくことになるのか、注目だ。
この記事の筆者:山田 敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。
X(旧Twitter): @yamadajour、公式YouTube「スパイチャンネル」
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。
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