フランス人を傷つける、日本人が言いがちな「褒め言葉」とは。訪日経験者が感じた“閉塞感”の正体

2024年、訪日外国人の数がついに過去最高に。筆者が暮らすフランスでもコアな日本ファンが存在します。しかし、実際に足を運んでみると、ポジティブなイメージとは裏腹に、予想外の「がっかりポイント」が浮かび上がることが少なくありません。

清水寺
外国人旅行客であふれる観光地(写真は筆者撮影、以下同)
2024年の訪日外国人数は、これまでの過去最高であった2019年の年間累計を上回り、約3687万人と過去最多を記録しました。筆者が暮らすフランスからの旅行者も多く、ヨーロッパからの訪日客ではイギリスに次いで2番目に多いことが明らかになっています。

フランス人に「日本のどんなところが嫌い?」なのかを聞いてみた

フランスで報じられる日本といえば、和食や日本酒、着物、工芸といった「伝統文化」や、漫画やアニメなどの「ポップカルチャー」が代表的です。フランス人はこれらを求めて訪日するわけですが、実際に訪れてみると、「日本は素晴らしい」と感じる一方で、受け入れがたい部分、つまり嫌いな部分がどうしてもあるということです。

外国人が日本を称賛するメディアを見れば、普段は気付かない自国の良さを再発見することができるでしょう。しかし日本を訪れている外国人は、そもそも日本にある程度の興味があって来ています。

一方、フランスでは外国旅行経験者のうち、訪日経験がある人はたったの2割という統計が出ています。メディアでは外国人が「日本大好き」「日本は素晴らしい」と語る場面を多く紹介していますが、実際の日本ファンはごくごく一部。「日本はアジアの一国にすぎない」という認識の方が、マジョリティなのではないでしょうか。

フランス在住者としてはむしろ、「働き過ぎな日本人」や「原発」「地震」をフランス人から心配されることがありました。筆者はフランスで暮らして初めて、日本がどのように見られているかを客観的に理解することができたのです。

以上を踏まえて今回は、訪日経験のあるフランスの友人たちに、思い切って「日本の何が嫌いなのか?」と尋ねてみることにしました。答えの中には「ニュースでは触れられない意外なもの」も含まれていたので、ここでご紹介したいと思います。

日本の「過剰包装」は本当に必要か

まず、日本の嫌なところ、がっかりしたところで最も多かった意見が、「スーパーマーケットの過剰包装」です。

日本では野菜、果物、パンなどが1つひとつプラスチックで包装されていて、何を買うにもゴミが大量に出てしまいます。これにはフランス人旅行者も敏感に反応するようで、きれいな状態で販売しなければならないという日本人の潔癖さは、フランス人から「環境問題に対して関心が低い」と捉えられています。

というのも、フランスは青果のプラスチック包装が全面的に禁止された国。大手ファーストフード店では紙製のパッケージが使用禁止となり、2023年からは洗って繰り返し使える容器が新しく導入されました。フランスの各自治体は、これ以外にも環境に配慮したさまざまな取り組みを積極的に行っています。

そんなフランス人たちの目には、総菜が入ったプラスチック容器をさらにビニール袋で包む……という行為が「やり過ぎ」に映るようです。これは、スーパーやデパート前に設置される「傘袋」にも当てはまります。

あるフランスの友人は、「短い買い物時間のために、どうして毎回傘袋を使い捨てなければならないのか。使うにしてもプラスチックやビニールではなく、自作で持ち込めばいいのでは?」と語っていました。彼は日本を旅行中、1度も傘袋を使わなかったそうです。

こうした「過剰包装」は、フランス人が日本で感じた大きなネガティブポイントの1つです。つまり日本人は清潔さや利便性、他者への気遣いを追求するあまり、環境への配慮が欠けているように思われてしまうのです。

外国人にとってはつらい「朝食のおもてなし」

次いで多かったのが、ご飯にみそ汁、納豆、鮭といった日本の伝統的な「朝ごはん」について。私たち日本人にとってはホッとするこの朝食も、フランス人旅行者からは意外と不人気であることが分かりました。

筆者がフランスの美容院で実際に聞いた話をご紹介しましょう。夏の終わり、長期休暇から帰ってきたと見られるフランス人客が隣に座っていたときのことです。

その女性は休暇で初めて日本を訪れたらしく、美容師さんと旅行の思い出話で盛り上がっていました。もちろん、筆者が日本人であるという事実はその場の誰も知りません。

女性は「日本はきれいな国なのだけれど」とあらかじめ前置きした上で、「“リョカン”と呼ばれるホテルに泊まったときに、朝食に焼き魚や納豆が強制的に出てきて食べられなかった」と話しました。これには、担当のフランス人美容師さんも驚いていたのをよく覚えています。

確かに、フランスやヨーロッパ諸国の多くでは軽めの朝食スタイルを取っており、菓子パンやジャムを塗ったトーストなど、朝から甘いものを食べる習慣があります。つまり、日本食がどんなに素晴らしくても、塩気の強い朝食、特に納豆には抵抗を感じる人が少なくないということです。

そんな日本の朝食スタイルについては、フランス人旅行者の多くが「1度は経験としてトライすべきだが、毎日同じものを出されるのはキツイ」と感じています。毎回朝食を残すことに罪悪感を抱いた人も少なくありません。

筆者の周りにいるフランス人からも「ホテルや旅館では、お客さん全員に同じ朝食を押し付けるよりも、選択できる食事が望ましい」といった多くの意見を聞きました。こちらが「おもてなし」や「よかれと思って」提供した場合でも、文化の違いによりうしろめたさを抱かせるケースがあることは、筆者も海外での生活を通じて実感したことでした。
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日本人が言いがちな「あの言葉」が、フランス人を傷つけている
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