2024年も残りわずか。この時期の恒例行事と言えば「実家帰省」。帰省ラッシュのニュースからは、帰省=楽しみ、といった人々の声が流れるが、中には帰省が憂鬱(ゆううつ)=帰省ブルーだという声も。特に帰省ブルーを強く感じているのは独身のアラサー世代だ。
恋愛や結婚の話を振られると2人に1人が「プレッシャー」
「いい人はいるの?」「いつ結婚するの?」正月、実家の両親や親戚からこんな声をかけられたアラサー世代は多いのではないだろうか。学生時代や就職したての20代前半までは、恋人の有無や、仕事の様子をうかがう程度だった親も、アラサーに突入した途端「結婚は?」と真剣な表情で聞いてくる。
そんな状況にうんざりしている人も多いようだ。
国内最大級のマッチングアプリ「ペアーズ」を運営するエウレカが、アプリユーザー4047人(20〜39歳の男女)に対して実施した「恋活・婚活に関する家族間のコミュニケーションについて」の調査によると、帰省時に実家で恋愛や結婚の話をした経験がある独身者(実家暮らしを除く)は72.1%だった。
そのうち2人に1人(46.1%)は「(恋活・婚活への)プレッシャーを感じる」と回答しており、そのうち、前述のような話題が憂鬱で「恋活や婚活のモチベーションが低下したことがある」と答えた人は42.9%と約半数にのぼる。
正月前のLINEで帰省をとりやめたケース
「正月前のLINEのやりとりで実家に帰るのが億劫になった」こう語るのは、東京在住のAさん(30代)だ。彼女は実家がある九州への正月帰省をとりやめることに。帰省しようか迷っていた11月、母親から届いたLINEで帰省しないことを決意した。
Aさんは現在恋人はいないが、結婚願望はある。うわさ好きだというAさんの母親は、Aさんが帰省するたびに、知り合いの結婚や出産情報をAさんに伝えるのだという。以前帰省した際、Aさんは親に対し「『(結婚は)したい。まぁいい人がいればね』でにごした」と語る。
前述の同調査では、Aさんのように結婚に関する話題へのプレッシャーを感じて「帰省を実際に取りやめたことがある」と答えた人が17.4%いることが分かっている。
「やりたいこと」が明確であれば、帰省ブルーはない?
一方で、親から結婚のプレッシャーをかけられても、気にせず帰省するという声も。「『結婚は?』と聞かれたら、『縁があればするし、なければ無理にしなくていいと思っている』と親には伝えている」
こう話すのは、Bさん(32歳)だ。彼女は地元を離れ、現在1人暮らしをしながら舞踊関係の仕事をしている。
「妹が結婚したこともあり、最近結婚について親からあれこれ言われますが、きっぱりと自分の意思を伝える」
Bさんは親に結婚の話題を振られても、プレッシャーには感じないという。
「親に結婚したほうがいい理由を聞くと、老後に独りぼっちになったら心配、みたいな話をされます。その点については『もし結婚しなくても老後のためにお金もためるし、仕事はずっと続けるし!』と伝えていて。そうしたら『そっか』と、親はそれ以上何も言わなくなる」
Bさんの話を聞いていると、彼女の両親は子どもの選択に理解があることが分かる。Bさんは「親にちょっと面倒なことを言われても、会える機会は限られているし、帰省は大切にしたい」と語る。
帰省ブルーをどう乗り越えるか
親からの結婚話をプレッシャーと感じ、帰省ブルーに陥ったAさんと、プレッシャーを感じずに親と意見交換ができるBさん。Bさんのように、マイペースを貫くことができれば、帰省も楽しめそうだ。一方で、Aさんのケースを見てみると、帰省ブルーを引き起こす最大の理由は「〇〇ちゃん結婚したって」と、親から自分と他人を比較されるような感覚だということが分かる。
そこには「心配だから」とわが子を思う親の気持ちや「結婚が幸せ」だと信じてやまない価値観、世間体が含まれている。結婚をしていない子どもに対し、あれこれ説得したくなるのが親の性(さが)なのかもしれないが、そんなことを言われなくても、子どもは親の気持ちを重々分かっている。だからこそ余計プレッシャーに感じてしまうケースも多いのだ。
帰省して楽しめないと感じるのなら、Aさんのように帰省を取りやめるのも手だろう。実際、Bさんの家族のように理解のある親ばかりではない。
しかし、いつか親は老いて、いなくなる。その時に「会っておけばよかった」と後悔するくらいなら、プレッシャーの受け手である子どもが親より“大人”になった気持ちで「言われるうちが華」だと受け流す姿勢も必要なのかもしれない。
この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。