すぐ「すみません」と言う日本人、謝らないフランス人。欧米社会の「謝罪しない美学」とは?

日本にあって、フランスにないもの。それは「謝罪」の文化です。欧米の人々があまり謝らないことは広く知られていますが、フランス人も例外ではありません。今回は、フランス流の「謝らない文化」についてご紹介します。

なぜフランス人は謝らない?

パリのパッサージュ
それは子どもの頃から始まる
オフィシャルな場面でも、ビジネスシーンでも、親しい間柄でも、謝ることがほとんどないフランス人。ではなぜ謝らないのでしょう? 実際にフランス人に理由を尋ねると、「意味のない謝罪は、服従と同じ」という答えが返ってきました。

つまりフランス人にとっては、相手を敬って腰を低くすることよりも、謝罪せずに「威厳」や「自信」を保つことが重要なのです。平たく言えば、「相手に弱みを見せない」文化が根付いていると言えるでしょう。

この価値観は、幼稚園や小学校など幼少期から培われます。学校教育では、日本よりもプレゼンテーションやディベートの機会が多く、家庭でも両親のコミュニケーションを通じて学ぶ環境があります。つまり感情論よりも「なぜ問題が起きたのか」「どう解決すべきか」を重視する彼らにとっては、「謝罪しない」姿勢は当たり前のことなのです。

相手にも謝罪を求めない

一方で、フランスには「相手に過度な謝罪を求めない」文化があります。

例えば、先述した「公共交通機関が遅れた」場合。こうした状況では、フランス人の多くが「車掌が謝罪しても状況は変わらない。電車が動かない以上、謝るよりも迅速に問題解決に取り組むべきだ」という、非常に現実的な考えを持っています。またこの考え方は政治家や著名人など、「誰かが何かをしでかしてしまったとき」にも当てはまります。

以上から分かるように、謝罪に関しては、フランス人は日本人よりもかなり慎重なのです。道でぶつかったときや足を踏んでしまったときには「Pardon(失礼)」と言いますが、状況が深刻になればなるほど謝罪は難しくなります。フランス映画などでもそうした場面が映し出されていると思いますので、興味のある人はぜひ注意深く鑑賞してみてください。

この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。
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