学校では掃除の時間がない

まず、フランスの小学校、中学校、高校では「掃除の時間」がありません。学校には清掃を担当する専門のスタッフがいるためです。フランスの学校は日本に比べて授業時間が長いので、清掃は専門の人に任せるという考え方が一般的です。
このような環境では、学校という公共の場所を「みんなできれいにしよう」という感覚が育ちにくいでしょう。幼少期に培われた習慣が、大人になってもそのまま影響している可能性があります。
また、フランスには「個人の自由」が最優先される傾向があります。フランス人は、周囲に配慮する日本人の感覚とは異なり、個人の行動を細かく制御されることが大嫌い。こうした価値観では、一人ひとりに「街をきれいにするよう求める」ことは難しいと言えるでしょう。
ただし先述した通り、フランス人の全員がそうであるとは限りません。自ら率先して清潔を保つ人もたくさん存在しています。そのような人々は意識も高くポイ捨てに強い嫌悪感を抱いていて、捨てる人に口頭で厳しく注意することがあります。
実は高い罰金制度

ですが実際には罰金が科される場面に遭遇することは少なく、まだまだ効果的とは言えません。罰金制度がなくても街がピカピカな日本を見ると、「文化の差」や「意識の差」を痛感してしまいます。
在住者としてもう1つ感じるのは、街の汚れが「仕方ないもの」として受け止められていること。個人の清掃活動や罰金だけでは解決できない「当たり前」の感覚を変えるには、長期的な教育や啓蒙活動が欠かせないのかもしれません。
この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。