花の都パリが「犬の糞」「ポイ捨て」だらけの理由。フランス人はなぜ“街をきれいにする意識”が低いのか

エッフェル塔やセーヌ川といった華やかなイメージが定着しているパリ。しかし、その裏側には「ゴミのポイ捨て」や「犬の落とし物」といった、日本では非常識とされる問題が存在しています。そんな現状について、在住者がリアルなリポートをお届けします。

学校では掃除の時間がない

パリの路地裏
パリの街中で
「みんなで街をきれいにしよう」という意識があまり根付いていないフランス。その理由は、フランス特有の文化的背景や学校の制度に起因していると言えます。

まず、フランスの小学校、中学校、高校では「掃除の時間」がありません。学校には清掃を担当する専門のスタッフがいるためです。フランスの学校は日本に比べて授業時間が長いので、清掃は専門の人に任せるという考え方が一般的です。

このような環境では、学校という公共の場所を「みんなできれいにしよう」という感覚が育ちにくいでしょう。幼少期に培われた習慣が、大人になってもそのまま影響している可能性があります。

また、フランスには「個人の自由」が最優先される傾向があります。フランス人は、周囲に配慮する日本人の感覚とは異なり、個人の行動を細かく制御されることが大嫌い。こうした価値観では、一人ひとりに「街をきれいにするよう求める」ことは難しいと言えるでしょう。

ただし先述した通り、フランス人の全員がそうであるとは限りません。自ら率先して清潔を保つ人もたくさん存在しています。そのような人々は意識も高くポイ捨てに強い嫌悪感を抱いていて、捨てる人に口頭で厳しく注意することがあります。

実は高い罰金制度

パリのセーヌ川のほとり
パリのセーヌ川のほとり(画像出典:Oliverouge 3 / Shutterstock.com、2023年7月撮影)​​​​​​
パリ市はポイ捨てを取り締まるため、2015年から罰金制度を導入しています。対象は幅広く、家庭ゴミ・粗大ゴミの放棄から、たばこのポイ捨て、犬の糞の未回収、そして立小便まで。罰金額も年々引き上げられていて、2015年当初は68ユーロ(約1万800円)だったものが、2021年には135ユーロ(約2万1600円)に増額されました。さらに、45日以内に支払わなければ375ユーロ(約6万円)に跳ね上がります。

ですが実際には罰金が科される場面に遭遇することは少なく、まだまだ効果的とは言えません。罰金制度がなくても街がピカピカな日本を見ると、「文化の差」や「意識の差」を痛感してしまいます。

在住者としてもう1つ感じるのは、街の汚れが「仕方ないもの」として受け止められていること。個人の清掃活動や罰金だけでは解決できない「当たり前」の感覚を変えるには、長期的な教育や啓蒙活動が欠かせないのかもしれません。

この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。
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