ヒナタカの雑食系映画論 第134回

映画『アット・ザ・ベンチ』の“尊さ”から、実写版『秒速5センチメートル』への期待がさらに高まった理由

2025年秋公開予定の実写映画版『秒速5センチメートル』でメガホンを取る奥山由之監督は、11月15日公開のオムニバス映画『アット・ザ・ベンチ』も手掛けています。作品の特徴や魅力、そして『秒速5センチメートル』との共通点を記しましょう。(※サムネイル画像出展:(C)2024 Yoshiyuki Okuyama/Spoon Inc, All Rights Reserved.)

3:第2話は「昼下がりのカップルと不思議なおじさんの話」

第2話の出演者は岸井ゆきの、岡山天音、荒川良々。内容ははっきりとコメディーです。まずカップルの会話で、女性の方から「別れてみる?」といきなり提案して、とある突飛な「例え」を繰り出し、それに対して男性が「ツッコミ」をする一連の流れは、舞台で見るコントのよう。なおかつ映画という媒体だからこその「自然さ」も担保されていました。
アットザベンチ
(C)2024 Yoshiyuki Okuyama/Spoon Inc, All Rights Reserved.
そのカップルの会話を、後ろから知らないおじさんが聞いている(見ている)という状況もまた笑いを誘います。もちろんおじさんはただ聞いているだけだけなく、とある「割り込み方」をするのですが……そこからの展開(ボケとツッコミ)もまた予想外かつ、ある意味では「確かに」と納得できるものもあり、大笑いできました。
アットザベンチ
(C)2024 Yoshiyuki Okuyama/Spoon Inc, All Rights Reserved.
脚本家は8人組ユニット・ダウ90000主宰のお笑い芸人であり、公演の演出も手掛けている蓮見翔。作品のインスピレーションを得たものとして、友人との会話やファミレスで聞く隣の人の会話などがあったそうです。そんな「日常的にあり得る」おかしみを作品に昇華できるタイプの作家なのだと思えました。

4:ネタバレ厳禁、まさかの展開も!?

第3話以降の内容も簡単に記していきましょう。

第3話は「家出をした姉とそんな姉を探しにやってきた妹の話」で、出演者は今田美桜と森七菜。エピソードの冒頭から「怒鳴り合っている」勢いのある内容ながら、やがてそれぞれが抱えている悩み、はたまた矛盾が見えてくる、全エピソードの中で最も切実な内容でした。脚本は映画『もっと超越した所へ。』などの根本宗子です。
アットザベンチ
(C)2024 Yoshiyuki Okuyama/Spoon Inc, All Rights Reserved.
第4話は「ベンチの撤去を計画する役所の職員たちの話」で、出演は草なぎ剛、吉岡里帆、神木隆之介。職員2人が目の前のベンチの寸法を測ったりする中でボケとツッコミが応酬する、第2話に負けず劣らずコメディー色が強い作品なのですが……それ以降の展開はネタバレ厳禁! 3人の出演者、特に草なぎ剛の個性や「らしさ」が生きた役どころにも大いに注目です。

脚本を担当したのは監督の奥山由之自身なのですが、これまでで最も「攻めた」内容であることにも驚きました
アットザベンチ
(C)2024 Yoshiyuki Okuyama/Spoon Inc, All Rights Reserved.
第5話では、第1話の幼なじみの男女、広瀬すずと仲野太賀がもう一度登場します。具体的な内容は秘密にしておきますが、後述する通り、この第5話にこそ「この監督なら実写映画版『秒速5センチメートル』を成功できる」と確信できた理由があったのです。
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『秒速5センチメートル』との最大の共通点は?
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