ハートフルなロードムービーのようで、実は……
「綾瀬はるか主演の、小学生の女の子と共に、お母さんのもとへと向かうロードムービー」と聞くとキャッチーでハートフルに思えますし、実際に子どもから大人まで楽しめる内容なのですが……本編を見るといろいろな意味でびっくりもするでしょう。端的にいえば、めちゃくちゃ変わっているけど、めちゃくちゃ面白い映画でした。 もちろん予備知識ゼロでもいいのですが、「こういう作品だと分かってから見る」のもいい選択だと思います。その理由を記していきましょう。1:映画館で「浸って」ほしい「音」が重要な内容
まず、本作は映画館で見るべき内容であると断言します。なぜなら「音」の演出が重要な、「浸る」タイプの作品だからです。夜に訪れる少し寂しい雰囲気のドライブイン、湿った空気を感じられるトンネル、緑深い森、神秘的な湖など、それぞれの画がまるで「日本の原風景」のよう。風が木々の葉を揺らす音や、虫の羽音や鳥の鳴き声などの「自然の音」が聞こえてくるのです。 後述するように、「旅の途中で不思議なキャラクターたちと出会う」内容でもあるため、早送りはできず、他に邪魔が入らない「映画館」という環境で見てこそ、一緒に旅をしているという「一体感」があるはず。
カメラワークも印象的で、例えば2人の主人公が出会う場面、顔のアップを交互に映して「同じ目線の高さで正面から向き合う」シーンは秀逸でした。そうした映画という媒体ならではの表現方法を、劇場で味わい尽くしてほしいのです。