中学受験の「お得校」とは?
ある情報誌では、「早慶上理」や「MARCH」といった上位の大学の合格者数から、入学時の偏差値に対する出口の偏差値を割り出し、学力を伸ばしてくれるレバレッジのある学校ランキングを公表。これを見ると、いわゆる中堅校と呼ばれる学校や偏差値45前後の学校が名を連ねており、確かに「お得」という言葉がしっくりくる感じもします。
保護者が中学受験を選択する理由として一番に挙げるのは、「中高一貫教育によってわが子がよりよく育つことを期待しているから」ですが、大学合格実績というのは、その結果として分かりやすい指標です。
しかし、最近はその大学入試も多様化しており、「お得」の中身をよく見極める必要があると筆者は考えています。
大学入試の変化に伴い、「お得」の中身も変化?
というのも近年、大学は年内入試と呼ばれる推薦入試や総合型選抜の定員枠を増やしているからです。入学者全体のうちそれらが占める割合は、私立大では約6割、国公立大は約2割となっており、難関大学では一般入試の割合が多いものの、この傾向は今後も増えていくと言われています。こうした大学入試の変化に伴い、一般入試を経て大学に進学する生徒が多い中高では、従来型の大学入試に向けたきめ細かい指導を行い、いわゆるペーパーテストで測られる学力を伸ばしていきます。例えば、毎日学習計画表を作成させて、教員がそれをきめ細かくチェックすることで学習習慣を身につけさせる、小テストや補習・補講を頻繁に行い、取りこぼしがないように学力の定着を図る、予備校と連携して放課後に校内予備校を開校し受験勉強を学内で完結させるなど、いわゆる面倒見のよいサポート型の学校が多いです。
一方、推薦入試での入学者が多い学校では、生徒それぞれの希望に合わせた進路指導を行い、指定校推薦や公募制の学校推薦型選抜、総合型選抜を活用して大学進学をさせます。そうした学校の中には、教科書ベースの教科学習ではなく、さまざまな体験学習と組み合わせた探究学習に力を入れているところも。
以前は、私学のメリットとして先取り教育が注目されていましたが、最近あまり聞かないのは、こうした大学入試の変化とともに、学習指導要領が改訂したことがあります。現在施行されている学習指導要領では、知識を詰め込む教育から、自ら問いを立てて考える探究型の学びへの転換が求められているのです。
また総合型選抜では、大学のアドミッションポリシーに合致している人物かどうかを判断するために、これまでにどんなことに取り組んできたのかという活動報告や、大学で何を学びたいのかという志望理由書、小論文など、大学が求める書類を提出する必要があります。そのため、中高時代にどんな体験をしたのか、大学で何をしたいのか具体的に語れるものがある方が有利です。高校としては、大学進学のためだけに、探究型の学びをしているわけではないでしょうが、結果的に、それが大学進学の道を開くことにつながる面も出てきたのです。
今後は中学受験でも、各学校の教育内容を見る際に、大学合格実績の数字だけでなく、一般入試を経て進学する生徒が多いのか、総合型選抜や指定校推薦枠を経て進学する生徒が多いのかまでも含めて、比較していく必要が出てくるでしょう。