3本とも、アニメだからこその演出、言葉に頼らない表現そのものに感動がある、子どもから大人まで楽しめる内容なので、1人でももちろん、家族や友達といっしょに見る映画の候補にも入れてみてほしいです。
3位:『こまねこのかいがいりょこう』(10月25日より公開中)
小物や人形をちょっとだけ動かして撮って、またちょっとだけ動かして撮って……という工程をひたすら繰り返して作られる、最近では『PUI PUI モルカー』なども大人気を博した「ストップモーションアニメ」です。
『こまねこのかいがいりょこう』は、過去の名作3本と同時上映される11年ぶりの新作で、総上映時間50分のうち8分の作品と、他のアニメ映画と比較してもかなり短い上映時間となっています。
「実在感」のある人形の質感、少しシビアだけど優しさいっぱいの物語、日本語のセリフなし(「ニャー」の鳴き声で感情を表現する)だからこそ「気持ちを積極的に読み取る」面白さ……その全てが宝物と言っても過言ではありません。作り手の尋常ではない労力が報われるぜいたくな時間を過ごしながらも、気を使わず楽しめるでしょう。
特に3本目の、26分という最も長い尺で描かれる『ほんとうのともだち』は、予想外の展開に大人も感動できる、名作と呼ぶにふさわしい内容でした。同時上映するこちらの作品と、『はじめのいっぽ』(5分)、『こまとラジボー』(9分)は、Amazonプライムビデオで配信中の短編集『こま撮りえいが こまねこ』で見ることもできますが、劇場で集中して見ると感動も増すことでしょう。
そして、新作『こまねこのかいがいりょこう』は初めての海外旅行に出掛けることになった主人公「こまちゃん」の成長が描かれます。公式Webサイトに掲載されている合田経郎監督のコメントによると、「ウクライナからぬいぐるみを抱えて避難する子どもの映像を見たことをきっかけにして生まれた」作品だそうで、なるほど「子どもにとって手放せないもの」を描く物語は多くの親子にとって普遍的なものですし、大人こそが再認識するべき価値観が表れていました。
特別鑑賞料金は大人1300円(一般・大学生・専門学生)・小人900円(3才以上~高校生)とリーズナブル。上映館は少ないですが、近くで見られる人は積極的に足を運んでみてほしいです。