JR青梅線「拝島駅」には何がある? 米軍基地だけじゃない、多摩川&玉川上水のある自然の街。石川酒造も
JR青梅線内で、立川駅と青梅駅のほぼ中間にあたる「拝島(はいじま)駅」。在日米軍横田基地の南端に近い場所にあり、牛浜駅や福生駅周辺とも並んで「基地の街」という印象を持たれがちですが、駅を降りた先の街中には何があるのでしょうか。
日本酒「多満自慢」の製造元、「石川酒造」は楽しさいっぱい
石川酒造は幕末の1863年に創業した酒造会社で、明治維新後の1881〜1883年に現在の地域へ酒蔵を新設。創業当時は「
八重桜」という銘柄を用いていましたが、大正時代の1919年に「
八重梅」に変更し、さらに昭和に入った1933年に現在の「多満自慢」を使用するようになりました。現在では東京都を代表する有名酒造の1つとして知られています。
敷地内は日本酒を製造・保管している「
本蔵」のほか、日本酒、食品類、グッズ類を扱う直売所「
酒世羅(さけせら)」、敷地内の雑蔵(ぞうくら)1階を改築したレストラン「
食道 いし川」、同じ雑蔵の2階で酒造と地域の歴史を展示する「
雑蔵史料館」など、見どころは盛りだくさん!
本蔵は国の登録有形文化財に指定されているほか、美しく伝統ある酒造内の建物・風景は、ドラマ『
リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系)、『
金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)、『
さよならマエストロ』(TBS系)などのロケ地としても知られています。
とりわけ推したいのが、1992年に開館した「雑蔵史料館」。創業家の石川家&酒造の歴史、そして石川家が関わり続けてきた地域全体の歴史が詰まっています。江戸時代に石川家で用いていた生活道具類や、かつての酒造現場の様子を再現したジオラマなどもあり、入場無料とは思えない情報量には圧倒されるばかりです。
また、直売店「酒世羅」で購入した日本酒やおつまみなどは、敷地内の所定スポットで飲食OKとのこと。かつては試飲などもあったようなのですが、2020年以降のコロナ禍以来、感染症予防のため中止しているそうです。
なお、石川酒造では日本酒だけでなく、クラフトビール「
多摩の恵(たまのめぐみ)」も1998年より製造・販売しています。「
福生のビール小屋」というイタリアンレストランもあるので、酒造が作ったビールを現地で味わうことも可能です。
さらに、現在の石川酒造は「
酒坊多満自慢」というゲストハウスも経営しています。酒造でおいしいお酒&料理を堪能した後、そのまま現地で宿泊なんて何ともぜいたく。インバウンド需要も高そうです。
そして、高品質な日本酒を作るためには、高品質な水が欠かせません。石川酒造では直近の多摩川水系の水だけでなく、玉川上水を熊川という地域で分岐させた「
熊川分水」も、「多満自慢」「多摩の恵」の仕込み水として活用しています。
雑蔵史料館での説明によると創業者の石川家は、洪水で農地を壊されて悲しむ地域住民のため、多摩川の治水事業にも深く関わっていたそうです。石川酒造の敷地内では、多摩川と熊川分水(玉川上水)への感謝と畏敬が端々から感じられました。
敷地内を流れる熊川分水の用水路で、メダカなど大小の淡水魚が泳いでいました。
拝島駅のステンドグラスのタイトルの一部「美しい水の流れ」は、まさにこうした水と自然の豊富な環境に集約されているのです。
拝島は玉川上水&多摩川の両「タマガワ」に彩られた「水辺の街」
石川酒造の美しさに満足し、お土産に日本酒や食品を買い込んでから、さらに西へ進んだ先にあるのが「
多摩川緑地福生南公園」。
広場や野球場、テニスコートなどが整備されており、川沿いの見晴らしも大変よく、地域の人々のレクリエーションに重宝されています。
ランニングやサイクリングのための遊歩道も整備されているので、多摩川の豊かな自然を眺めながら体を動かせそうです。
多摩川をまたぐ「
睦(むつみ)橋」からの風景も広々&爽やか! JRの駅から十数分ほど歩いただけでこの景色です。
拝島駅周辺は、水と緑を体感する上で申し分ない環境。「米軍基地の街」という印象が強いですが、実際に降りて駅周辺を散策してみれば、中世・近世から現在まで続く深い歴史と、玉川上水&多摩川という豊かな「水辺」に彩られた自然豊かな街であることが分かります。
見どころの多い「拝島」駅。1度訪れてみてはいかがでしょうか。
この記事の筆者:デヤブロウ プロフィール
都内在住の街歩きライター。Yahooエキスパートとして台東区の地域情報を発信するほか、「macaroni」など複数メディアで執筆を行う。飲食店、博物館、銭湯巡り、寺社探訪を中心に地域情報を発信中。東京シティガイド検定を取得済み。