とりあえずで始めると沼にハマる
このようなことが起きがちな理由の1つは、中学受験の構造にあります。それは中学受験が「レールを敷くのは親、走るのは子ども」という二重構造になっているからです。ある調査によると、最初に中学受験をしようと考えた人は、私立・国立では「母」が52.8%で最も多く、「子ども本人」は23.4%、「父」は20.7%だそうです。公立中高一貫校でも受験を最初に考えた人は「母」が42.2%で最多。次に多いのが「子ども本人」で40.5%だそうです。
しかし、多くの人が、何のために中学受験をさせるのかを深掘りせず、「とりあえず」で始めると、受験システムに飲み込まれ、少しでも成績を上げようと必死になってしまいがちです。
現在の中学受験のテキストはかなり難しく、子どもに負担をかけることになります。それでも、多くの子どもは無意識に親の期待に応えようと頑張ります。その挙げ句、「これだけの時間とお金をかけたのにこんな結果」と言われたら、子どもはどんな気持ちになるでしょうか。
やりようによって、受験は子どもの育ちの機会になる
筆者は、これまで20年以上中学受験の世界を見てきました。最初は受験生の親として、その後は教育ジャーナリストという立場で塾や学校を訪れ、校長先生や塾の有名講師への取材を行っています。また、模試会場での講演会などを通して、2万人以上の受験生の保護者に会い、話を伺ってきました。その中で感じるのは、「この道」は1度ハマったらなかなか抜け出せない沼のようだということ。
しかしやりようによっては、目標に向かって努力する経験は、子どもの育ちの機会になります。泥沼にハマらず、育ちの機会にするためには、中学校でどんなことをしたいのか、なんのために受験をするのかを子どもと一緒に考えることが大切です。
それを私は受験軸と名付けました。これは高校受験でも大学受験でも同じです。やるのは本人です。保護者はそのことを忘れないようにしなければなりません。
せっかくやるなら、子どもの育ちの機会にしませんか?
この記事の執筆者:中曽根 陽子
数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストとして、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエーティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。お母さんが幸せな子育てを探究する学びの場「マザークエスト」も運営している。『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)など著書多数。