ヒナタカの雑食系映画論 第115回

2024年夏に見てよかった洋画をランキングにしてみた。エンタメ性抜群の作品から厳選したベスト5

2024年夏に公開された、またはこれから公開される洋画(海外実写映画)から、心から見てよかったと思えたベスト5を発表しましょう!(※サムネイル画像出典:『フォールガイ』より(C)2024 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.)

3位:『ポライト・ソサエティ』(8月23日より公開予定)


バラク・オバマ元大統領の2023年お気に入り映画に選出されるなど高い評価を得た、「女子高生が戦う!」というエンターテインメント性を推したアクション映画です。主人公が、尊敬していた姉が芸術家の夢を諦め結婚することを阻止するための行動……いや完全に「暴走」をしてしまう様がコメディーになっていると同時に、その心情そのものは切実なので多くの人が共感できるでしょう。

インド映画のようにも見えますが、実際はイギリス映画であり、物語の舞台は現代のロンドン。南アジア系の移民たちが当たり前に暮らしている光景が映し出されています。主人公はパキスタン系イギリス人の女子高生で、イスラム文化における「女性が結婚し子を持つこと」への期待の高さが、周りからバカにされ反対されようともスタントウーマンを夢見る主人公の気持ちとは全く迎合していないことが重要な意味を持っています。その保守的な価値観を前提にフェミニズムのメッセージを備えつつも、前述した主人公の暴走を通じてミサンドリー(男性嫌悪)の問題も同時に描いていることも誠実でした。

そんな風に社会派のメッセージがありながらも、やはり主体となるのはアクション。カンフー映画のギミック、インド映画のゴージャス感、さらには『キル・ビル』などのクエンティン・タランティーノ監督作を思わせる演出などそれぞれがキレキレ。さらには「互いに愛情があるからこそ激しいケンカもしてしまう」という「姉妹あるある」が展開し、そんな2人だからこその絆も示す王道の「シスターフッドもの」の魅力も満載です。最後には爽やかな気分になれるでしょう。

2位:『モンキーマン』(8月23日より公開予定)


『スラムドッグ$ミリオネア』で知られる俳優のデヴ・パテルが構想8年をかけ、主演・監督・脚本まで務めたガチガチのバイオレンス復讐アクション映画です。幼い頃に故郷の村を焼かれて母も殺されて孤児となり、地下のファイトクラブで猿のマスクを被り「殴られ屋」として生計を立てているという、どん底の人生を送っていた青年が、全てを奪った者たちのアジトに潜入する機会を見つけ、これまでの怒りを爆発させるのです。

そのデヴ・パテルは韓国のアクション映画にインスピレーションを得たそうで、実際に彼が好きだという『アジョシ』『オールド・ボーイ』のエッセンスを感じます。『ザ・レイド』『ジョン・ウィック』のスタッフも参加しており、それらのバイオレンス強めなアクション映画の魅力を打ち出しながら、インドの架空の都市を舞台にした(撮影が行われたのはインドネシアのバタム島)ビジュアルには存分に独自性を感じました。
 

女性やマイノリティへの搾取、腐敗した権力を許している社会への怒りを代弁する復讐劇は痛快にも思えますが、その暴力の痛みをR15+指定も納得の苛烈な描写で示したり、はたまた子どもが巻き込まれることを断固として許さない姿勢も誠実だと思えました。それでいて、アクションシーンのあまりのエクストリームぶりに「笑ってしまうところもある」のもまた魅力的。同じくR15+指定のアクション映画『デッドプール&ウルヴァリン』を併せて見てみるのもいいでしょう。
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