1:『あのコはだぁれ?』(7月19日より公開中)
『呪怨』『犬鳴村』などを手掛けた清水崇監督による、2023年公開の『ミンナのウタ』のDNAを引き継ぐ最新作です。とはいえ、登場人物の大半は一新されていて、物語の大筋は「次々に生徒が消えてくる」とシンプルなので、予備知識なく見ても楽しめます。しかし、『ミンナのウタ』からあった謎を前提に話が進む場面もあるので、可能であればそちらを先に鑑賞しておいたほうがいいでしょう。
そんな『あのコはだぁれ?』は“ガチ”の怖さ。前作で多くの人が絶叫した「玄関」でのトラウマシーンにさらなるツイストを効かせ、その後もバラエティ豊かな恐怖シーンのつるべ打ち。全編で「恐怖のおもてなし精神」にあふれていました。特にゲームセンターでのあのアイデアには、恐怖を通り越して「その手があったか!」と感心して、変な笑いさえ込み上げてきます。
『変な家』の大ヒットもあったためか中高生も多く動員し、前作『ミンナのウタ』を超えて興行収入5億円を突破するスマッシュヒットとなったのも実に喜ばしいことです。各地で評判を呼んでいる「絶叫上映」が、8月9日から追加開催されているので、こちらもぜひチェックしてみてください。
2:『Chime』(8月2日より公開中)
DVT(デジタル・ビデオ・トレーディング)プラットフォームの「Roadstead」で展開していたオリジナル作品の劇場公開がスタートしました。これが、もう涙が出そうになるほどに怖い! 刺激の強い殺傷描写のためにR15+指定もされており、かなりの覚悟を持って見たほうがいいでしょう。
上映時間45分の中編作品で、物語は料理教室の先生の周りで起こる異変を描く、というものなのですが、まずは「不条理」であることが恐怖を呼び起こします。最初は生徒の1人が「自分の脳の半分は機械に入れ替えられている」と異常なことを口にすることから。その後は主人公自身の異変や、家族の日常的なシーンでさえも不穏で……それぞれ「わけが分からないのにどこか連続性を感じられる」ことであるのに加え、「次に何が起こるのかが分からない」からこそ怖いのです。
根底にあるのは「一線を超えてしまうかもしれない」恐怖。描かれる出来事は突飛なようで、このような異常さに自分も「入り込んでしまう」可能性があるかもしれないと思わせるのです。『CURE キュア』『回路』などで知られる黒沢清監督らしい演出がさえわたっており、カメラワーク、音響、俳優の表情に至るまで全てが怖く、あの「椅子」のシーンはもうトラウマ級。現実の世界の認識さえも変えてしまう、「もう見る前には戻れない」傑作だと断言します。