3:『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』(8月9日より公開中)
ウォルト・ディズニーのアニメ版も有名な、児童小説『くまのプーさん』の著作権が2022年1月をもって消滅し、パブリックドメインになったことで実現した「まさかのホラー映画化」の第2弾です。
しかしながら、2023年に公開された前作『プー あくまのくまさん』はアメリカの批評サービスRotton Tomatoesで批評家支持率は脅威の4%、最低の映画を決めるラジー賞ことゴールデンラズベリー賞では最多5部門を受賞するという、不名誉な(もはや“おいしい”?)事態になってしまいました。
実際に前作を見ると酷評にも納得で、「とにかく急いで作った」雑さや志の低さをただ感じてしまう残念な内容だと思いましたが、この続編は前作を見ていなくても楽しめますし、そちらとは比べものにならないほどに面白い! 一時はRotton Tomatoesの批評家支持率が100%になったことも話題となりました(ただし現在は48%と賛否両論)。 最大の特徴は残酷描写に遠慮が一切ないこと。R15+指定でもギリギリと思えるほどの死体の多さかつ、血飛沫がゴージャスに噴き出しまくりで、前作のヒットによって10倍に増えた予算をグロ方向に全力で注いだような、すがすがしさがありました。
何より、主人公と周りのキャラクターの心理描写がとても丁寧で、明かされる過去の出来事や、その心理に共感して、ついホロリとしてしまう意外な感動があります。脚本(共同)を手掛けたのは、コアなホラーファンから称賛された『サマー・オブ・84』のマット・レスリーであり、そちらと同様にもの悲しさを備えたホラー映画を求める人にもおすすめです。 ちなみに……今後も著作権切れのキャラクターをホラー化するプロジェクト、その名も『プーニバース』が始動しており、この『プーさん』の第3弾に加えて、『バンビ』や『ピノキオ』の「闇落ち」も発表されているのだとか。今後も(本気で誰かから怒られないかも含めて)気になります。
4:『#スージー・サーチ』(8月9日より公開中)
行方不明になった人気インフルエンサーを見つけた女子大生が、あっという間に有名人になるという、SNS時代ならではのサスペンスホラーです。怖いのは、主人公とその周りの会話や振る舞いから「あれ? もしかして……」と「とある疑惑」が増してくること。「やっぱりそうだったか」と予想が当たる人も多いでしょうが、その先に「そう来たか!」と予想外の事態にもハラハラできるでしょう。
主人公がポッドキャストで未解決事件の考察を配信するも、なかなかフォロワーの増えない孤独な大学生で、多発性硬化症(MS)を発症した母親の介護もしている状況も身につまされます。その後の展開を奇抜に感じてしまう人もいるかもしれませんが、現実でも塞ぎ込んだ感情と承認欲求が「過剰な言動」へと発展してしまうことは、誰にとっても他人事ではないと思うのです。
『ヘレディタリー/継承』のアレックス・ウルフが「瞑想(めいそう)」をするタイプのインフルエンサーに扮(ふん)しており、いわゆる“陽キャ”的ではないことがむしろ魅力的に思えてきます。そこから「男女のバディもの」もしくは「ラブストーリー」にもなりそうなところですが……それ以降のことは秘密にしておきましょう。
5:『ニューノーマル』(8月16日公開)
こちらは韓国製で、1人暮らしの女性の元に火災報知器の点検をする中年男がやってくる、中学生が車椅子の老婦人を助けてあげる、マッチングアプリを使っていると意外な人物がやってくる……といった、一見すると関係のない6つのエピソードが交錯するという内容です。
ネタバレ厳禁の意外な展開と、「その時点では意味が分からない」不条理さが恐怖を呼び起こしますが、時には「理不尽すぎて笑ってしまう」ダークコメディーの領域に到達していました。韓国で大ヒットを記録したホラー映画『コンジアム』のチョン・ボムシク監督らしく、ハラハラするサスペンスシーンも大いに盛り上がります。
なお、公式の宣伝ではほぼ明かされていませんが、日本のテレビドラマ『トリハダ〜夜ふかしのあなたにゾクッとする話を』(フジテレビ系)の事実上のリメイクであり、映画本編での韓国語のエンドロールにおいて、日本語で同ドラマのタイトルがクレジットされています。日本のホラーコンテンツが韓国でリメイクされることは名誉なことですし、実際に面白くて怖い内容になっているのですから、もっと推してほしいところです。