6:『デッドストリーム』(8月16日公開)
ファウンド・フッテージ(発見された映像という体制)かつPOV(主観視点)のホラーです。主人公は「炎上系配信者」であり初めこそムカつくのですが、彼に襲いかかる恐怖の連続になんだかんだで同情してしまいますし、視聴者との相互的なやりとりもあるなど、現代らしい要素も盛り込まれた内容でした。
特筆しておかなければならないのは、その高評価ぶり。アメリカの批評サービスRotten Tomatoesで批評家支持率はなんと現在90%。内容そのものもエンターテインメント性が高く、さらにはコメディー要素もマシマシで、終盤のとある「超理論(でも納得?)」と、恐怖の対象を攻撃した時のツッコミには大笑いしてしまいました。
主演を務めたジョゼフ・ウィンターが、妻のヴァネッサと監督・脚本・制作・編集に至るまで2人3脚で作り上げたのも驚異的。低予算かつ制約が多い中でも、作り手のサービス精神と工夫により、面白い映画が作れることの証明のようです。PG12指定で刺激の強い描写もあるのでご注意を。
7:『サユリ』(8月23日公開)
『ミスミソウ』や『ハイスコアガール』などの押切蓮介による、知る人ぞ知る名作ホラー漫画の実写映画化作品です。結論から言えば、めちゃくちゃ怖くて面白い! というより、全てのホラー映画の中で最も面白いと断言できるほどに面白い!
物語は家族がどんどん悪い状況に陥るというもので、恐怖シーンはゴリゴリに怖く、その上バラエティ豊かなのです。そして、中盤の驚愕(きょうがく)の展開! それは映画の宣伝や本予告編では明かされており、もちろんそれを知って期待して見るのもいいでしょうが、一緒に連れて行く友達には内緒にしたりすると、より楽しいでしょう。
その先に待ち受けるさらなる衝撃的な展開の連続には、「こんなに面白い映画をありがとうございます!」と心の底から作り手に感謝して、そのことで泣いてしまうほど。その後に待ち受けていた、さらなる感動のために目から涙が滝のようにあふれてくるというのは、ホラー映画では初めての経験でした。
『エクソシスト』や『リング』など歴史を変えたホラー映画はこれまでもありましたが、『サユリ』は「エンタメ特化」で新たなホラー映画の可能性を切り拓いた大傑作です。白石晃士監督はこれまでも『カルト』『貞子vs伽椰子』などで娯楽性抜群のホラー作品を手掛けてきましたが、ついにその最高傑作にして1つの到達点を作り上げたのです。
唯一残念なのは、ショッキングなシーンに容赦がなくR15+指定であるため、劇中の主人公やヒロインと同じ中学生が見られないこと。こんなに面白い映画を見たら、もう大興奮で学校中の話題になること間違いなしなのに……! 逆に言えば、ホラーが大丈夫だという高校生以上の人は全員見てください。
また、見る前にはそれほどハードルを上げずに、「掘り出し物っぽいホラーを見よう」な気分で挑む&仲のいい友達を誘うと、最高の気分になれるでしょう。「(ホラー)映画って、なんて面白いんだ!」という、改めて重要な気付きがあなたを待っています!
9月もホラー映画が大充実!
さらに、9月6日より『エイリアン:ロムルス』『トラウマ。~日常に潜む恐怖をあなたに~』『映画検閲』『憑依』『メリーおばさんのひつじ』、そして9月13日より犯罪グループが吸血鬼の少女を誘拐してしまうという設定の『アビゲイル』も公開と、9月になってもいきなりホラー映画が大充実なのもたまりません。さらにホラー映画が充実する秋へと突入する前に、やはり夏のホラー映画も、ぜひ優先して見てください!
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。