20代女性の裏アカ所有率は約4割
久美子さんや美波さんのように、SNSのアカウントを複数持つ若年女性は多い。NTTドコモ モバイル社会研究所が2022年、「スマホ・ケータイ所有者のアカウント所有状況」について全国の15~79歳男女6587人を対象に実施した調査によると、10代女性の約6割、20代女性の約4割が「X(旧Twitter)のアカウントを2個以上所有している」という結果となった。40代以上はそもそも1つもアカウントを所有していないのに対し、突出して10代、20代のアカウントの複数所有率が高い。
若年女性にとって、裏アカを持っているのが“普通”になりつつあるが、裏アカによってトラブルに巻き込まれたケースもある。
勝手にスクリーンショットで撮影され、祝われた
「裏アカで結婚報告の夫との2ショットをアップしたら、友人にインスタのストーリーに勝手にアップされて」こう語るのは、弘美さん(32歳/仮名)だ。彼女はタレント活動をしており、直近で恋愛リアリティー番組への出演経験もあることから、自身の恋愛や結婚については公表していなかった。そのため、結婚報告も学生時代の親しい人のみが見れる裏アカでひっそりしたという。
「この裏アカは、信用している人のみがフォロワーのアカウントだったので、特に心配していなかったのですが、アップした日の夜、中学生の同級生のインスタを見たら、ストーリーに『弘美、結婚おめでとう!』と私が裏アカに載せていた夫との2ショット付きでアップされていて」
同級生のInstagramには鍵がかかっておらず、オープンなものだった。
「同級生は純粋に祝福したかっただけで悪気はなかったみたいなのですが、番組放映直後で、恋リアの熱狂的なファンが見たらどう思うか……。すぐに削除してもらいました」
さらに弘美さんは「これが番組への愚痴とかだったとして、スクショを取られて拡散されたら……と思うとぞっとしました」と語る。過去には、出演した番組の裏話なども書いていたというが、裏アカはすぐに削除した。
裏アカの流出はプライバシーの侵害に当たる可能性も
コンプライアンスが強く求められる現代社会において、我々が自身をさらけだせる場はほとんどない。唯一、自分をさらけ出せる場として活用されているのが“裏アカ”だが、「裏アカを巡り、多くのトラブルが起こっている」と、SNSの誹謗中傷問題に詳しい尾崎聖弥弁護士はいう。尾崎弁護士「裏アカだからといって気が大きくなり、過激なことを書き込めば、悪質な誹謗中傷として開示請求されてしまう場合も多いでしょう。また逆に、誰かが非公開の裏アカに投稿した内容を、第三者が勝手に外部に流出させた場合、プライバシー侵害や名誉毀損(きそん)で違法となる可能性があります」
裏アカを持つ人も裏アカを見る人も、投稿する内容には気を付けたいものだ。
※取材協力者のコメントは原文ママです
この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。
取材協力:尾崎聖弥 プロフィール
第一東京弁護士会。エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク所属。企業に対するコンプライアンス研修などを担当している。