『ボーイフレンド』が、他作品と一線を画す3つのポイント【恋リア出演経験者が考察】

男性同士の恋愛リアリティ番組『ボーイフレンド』(Netflix)が反響を呼んでいる。恋愛の枠組みにとらわれず、従来の恋愛リアリティ番組とは一線を画す展開とその魅力を考察する。(サムネイル画像出典:Netflixリアリティシリーズ『ボーイフレンド』 世界独占配信中)

Netflixリアリティシリーズ「ボーイフレンド」 世界独占配信中
(画像出典:Netflixリアリティシリーズ『ボーイフレンド』 世界独占配信中)

7月9日から配信が始まった男性同士の恋愛リアリティ番組『ボーイフレンド』(Netflix)が同月30日に最終話を迎えた。

『ボーイフレンド』は、男性が恋愛対象の9人の独身男性たちが約1カ月間、海の近くにたたずむおしゃれなビーチハウス「Green Room」で、生活を共にしながら、恋や友情を育んでいく物語だ。日本初の男性同士の恋愛リアリティ番組は大きな反響を呼び、Netflixの日本における『今日のTV番組TOP10』で一時ランキング1位になるなど、大きな話題となった。

恋リア出演者が、他作品よりも「ずっと面白い」と感じるポイント

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(画像出典:Netflixリアリティシリーズ『ボーイフレンド』 世界独占配信中)
『ボーイフレンド』はSNSを中心に話題となり「既存の“恋リア”が苦手」と話す周囲の友人からも絶賛の声が上がっている。恋愛リアリティ番組(以下、恋リア)への出演経験がある筆者が、他の恋リアと比較しながら、『ボーイフレンド』が従来の恋リアより「ずっと面白い」と感じる理由は下記の3つである。

魅力1:スピード感が“ない”恋愛から生まれる友情や絆

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(画像出典:Netflixリアリティシリーズ『ボーイフレンド』 世界独占配信中)
従来の恋リアと最も違うところは、恋愛におけるスピード感の“なさ”である。全話を通して、恋愛が大きく展開しない。

これまでの恋リアは、出会ってすぐに恋愛モードに突入し、意中の人に向かって猛烈なアピールを繰り広げられる様子が描かれてきた。その間、ライバル間で繰り広げられる激しいバトルも見どころの1つであるが、「いつ(相手を)好きになったの?」と視聴者が置いてきぼりになってしまう展開も多く、時に「やっぱり売名か……」と興ざめする視聴者も現れる。
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(画像出典:Netflixリアリティシリーズ『ボーイフレンド』 世界独占配信中)
一方『ボーイフレンド』 は冒頭の1話から、モテモテだったメンバーのカズトが「(出会って)すぐに人を判断できない」と冷静なコメントを残すところからスタートする。従来の恋リアを想像して視聴を始めると「もっとスピーディーに展開して……!」とやきもきしてしまう場面も多いのだが、これが恋リアが苦手な層をも取り込む『ボーイフレンド』最大の魅力である。

恋リアでありながら、出演者同士の友情や生い立ち、人生観が語られるなど恋愛以外の要素が多く、恋愛がなかなか進展しない展開が限りなく“リアル”に近いのだ。

魅力2:考えさせられる名言の数々

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『ボーイフレンド』 は、かつての『テラスハウス』(Netflix)を連想させるおしゃれな家での共同生活が舞台だ。その生活では、メンバー間で数々の人間ドラマや名言が飛び出すのだが、特に冒頭、参加者の1人でデザイナーのテホンが発した言葉が印象的だ。

「自分を『he』とか、男性と定義していない方はいますか?」
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(画像出典:Netflixリアリティシリーズ『ボーイフレンド』 世界独占配信中)
男性たちが運営するコーヒートラックの店名を考える1話でのワンシーン。テホンが「〇〇ボーイズでもいいし……」とアイデアを提案しながら、参加者たちに“ボーイズ”と定義してもよいのかを確かめた。参加者は、全員男性である。しかし、テホンは参加者たちの“性自認”について確認したのだ。
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(画像出典:Netflixリアリティシリーズ『ボーイフレンド』 世界独占配信中)
さらに3話で参加者が「自己愛が大事」と語るシーン。大学生の参加者・ダイが「でもそれで自己中になってしまうのも怖くて……」と、コロナ禍で政府や社会に文句を言っていた人たちの話を例に出しながら、社会に文句を言うのではなく、自身で解決すべき、といった自己責任型の持論を展開する。その際、テホンは、「自我を出すって、わがまま言うんじゃなくて『こういうことが我々必要です』『こういうことを求めてます』って言ってあげないと社会は変わらない」と諭す。

さらに「社会を変えるって難しくないですか?」と話すダイに「変わっていくべき。ずっと変えないままだと水も腐っていく。流れる水こそがきれいじゃん。結局メインストリームだけが得する社会。得してるからこそ、特権を持ってることが分かってないじゃん」と語るのだ。

この言葉にハッとさせられる。仕方ない、自己責任で片づけるのではなく、メインストリームに意見すること、そして自身が“求めている”ことを口にすることの大切さを教えてくれるのだ。
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(画像出典:Netflixリアリティシリーズ『ボーイフレンド』 世界独占配信中)
テホンは恋愛には最後まで大きく絡んでこない出演者だったが、その後も数々の名言を残し、自身の家族にカミングアウトすることへの葛藤を明かすなど、終始視聴者の胸を打った。

魅力3:恋愛は“めんどくさい”もの。恋愛の本質が垣間見える展開

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(画像出典:Netflixリアリティシリーズ『ボーイフレンド』 世界独占配信中)
1~2では、『ボーイフレンド』の恋リアでありながら、恋愛要素とは別の魅力を紹介した。最後は、恋リアらしい一面を紹介する。ダイとアーティストのシュンの恋愛模様だ。

何を考えているかいまいちつかめないシュンに対し、冒頭から熱烈なアプローチをしてきたダイ。紆余(うよ)曲折ありながら、2人が少しずつ距離を縮めていくシーンは番組の主軸に置かれているものの、なかなか恋愛に進展せずやきもきさせる。
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シュンは受け身でちょっとしたことで落ち込んだり、ダイの気持ちを試すような行動をしたりと、恋愛の“めんどくさい”部分を詰め込んだような存在に思える。しかし、彼の生い立ちや思いが語られることで一気に視聴者の共感を呼び、紆余曲折ありながら、最終話で一緒に人生を歩む約束をする2人は涙なしでは見られない。
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8月3日にNetflixの公式YouTubeチャンネルで生配信された『ボーイフレンドナイト』では、その後もダイとシュンが交際を続けていることが明かされた。さらに5日、ダイがシュンと同じ芸能事務所に所属することが発表された。今後の2人の活躍にファンの期待が高まる。

恋リアが苦手な層こそハマるはず

配信が始まり、1カ月たった今もSNS上では番組に対する感想が多く投稿されている。

「リアリティ―ショーって全然見たことなかったけれどハマっている自分がいる」「他の恋リアは苦手だけど、これはハマる」など、従来の恋リアに興味がなかった層の声が目立つ。
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(画像出典:Netflixリアリティシリーズ『ボーイフレンド』 世界独占配信中)
恋愛だけではない、多くの魅力と見どころにあふれた『ボーイフレンド』。見た後は、上質な映画を1本見たような余韻に浸ることができる。この夏の視聴をおすすめしたい。

この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。
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