ヒナタカの雑食系映画論 第110回

「R15+指定のヒーロー映画」にハズレなし。『デッドプール&ウルヴァリン』からその面白さを振り返る

『デッドプール&ウルヴァリン』が絶賛上映中の今、改めて「R15+指定のヒーロー映画にハズレなし!」と思える7作品を紹介しましょう。それぞれバラエティ豊かな魅力があることも分かるはずです。(サムネイル画像出典:(C)2024 20th Century Studios / (C) and TM 2024 MARVEL.)

3:『キック・アス』(2010年)

冴えないオタク少年が自警活動を始めた矢先、ヒーロー(?)の少女とその父親に出会うという内容です。ヘタレだった主人公の成長物語と、危うさでいっぱいの少女(というよりも人殺し)との共闘、さらに観客の予想を裏切る展開と、王道の復讐劇までが展開して、笑いつつも時には登場人物を本気で応援できるという、アクションを主体としたエンターテインメントとしてはもはや究極的とすらいえる面白さが詰まっていました。

残念なのは、現在は配信サービスでの提供がない上に、ソフトもプレミア価格がつけられており、見ること自体が難しくなっていること(2013年の続編の『キック・アス ジャスティスフォーエバー』は配信サービスにあり)。R15+指定のヒーロー映画における不動の最高傑作だと断言できる作品なので、早めに見やすくなることを願っています。

4:『LOGAN/ローガン』(2017年)

不死身の治癒能力が失われつつあるヒーローのウルヴァリンことローガンが、絶滅しつつあるミュータントの希望となる少女を守るため、共に逃避行をするという内容です。「西部劇」を連想させる渋い画作りや荒廃した舞台が魅力的で、命からがら子どもと共に脅威から逃げつつ戦う様は『ターミネーター2』も思わせました。

ほぼ絶望的といっていい過酷な状況に加えて、劇中には「スーパーヒーローが本当にいたら暴力的な人殺しだ」という冷徹な視点が投げかけられており、その「暴力の重さ」をこれ以上なく示すためもR15+指定の苛烈な描写は必要でした。いい意味で『デッドプール&ウルヴァリン』とは正反対な作風であり、併せて見るとより楽しめる(または怒る?)かもしれません。

5:『ジョーカー』(2019年) 

日本でも興行収入50億円を超える大ヒットを遂げましたが、劇場公開時に現実に与える危険性が指摘され、警察と軍隊が警戒態勢を取ったことも話題になりました。公式からは「ジョーカーというキャラクターもこの映画も、現実世界のいかなる暴力を肯定するものではない。ヒーローとして称える意図もない」という声明も出されましたが、いわゆる「無敵の人」になってしまった者の心情を生々しく描いているのは事実です。

心理描写が冴え渡っており、とことん最悪な状況に陥っていていく主人公のことが「理解できてしまう」ことそのものが恐ろしく、直接的な残酷描写を抜きにしても、子どもには絶対に見せてはならないと強く思えました。現実か妄想か分からなくなるあいまいな作劇も、いい意味で不安にさせてくれます。2024年10月11日の映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』にも期待しています。

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