公開初日から「いい意味でやりたい放題」「アクションもサプライズも最高」「ヒーロー映画が好きで良かった」など好評の声が続々と届き、映画.comでは3.8点、Filmarksでは4.3点の高評価をマーク(執筆時点)。日本では本国アメリカよりも2日早く公開された影響もあってか、2024年の洋画1位の初日記録も達成しており、さらなる大ヒットも期待できるでしょう。
そんな『デッドプール&ウルヴァリン』の何よりの注意点は、「銃器・刀剣や爪による刺激の強い殺傷流血の描写がみられる」という理由でR15+指定がされていること。アメリカン・コミック原作のスーパーヒーロー映画と聞くとファミリー向けのイメージを持つ方も多いかもしれませんが、他にもR15+指定がされながら高評価を得た作品は多くあるのです。ここでは、一挙7作品を紹介しましょう。
1:『デッドプール&ウルヴァリン』(2024年)
2016年の『デッドプール』と2018年の『デッドプール2』がいずれも大ヒット&高評価を得たシリーズ3作目にして、映画『X-MEN』シリーズでは事実上の主役だった「ウルヴァリン」との「共闘」が描かれる最新作です。
そのデッドプールは「観客に向かって話しかけてくる」「これが映画や漫画だと分かっている」など、いわゆる「メタ的なギャグ」を入れる破天荒なヒーローであり、今回は「他作品やヒーロー映画シリーズへのイジり」もパワーアップしていました。 しかも、今回はオープニングから血飛沫を撒き散らして首が吹っ飛ぶ、ヒーロー映画(とは思えない?)史上でも最高クラスの「グロのおもてなし」なアクションが展開。「あっ、やべっ、死んじゃった」というノリもギャグにしているのもなんとも不謹慎で悪趣味です(褒めています)。他にも下ネタも平気で口にしており「今回もR指定にされたんだから今まで以上に吹っ切れて好き放題にやる」様はすがすがしささえ覚えました。吹き替え版で見ると、その「言い方」にも笑ってしまうでしょう。
一方で、「誰かの役に立ちたい」という普遍的で切実な心情が根底に流れていていて、「相性最悪に思えた2人が少しずつ心を通わせていく」正統派のバディものでもあり、さらには「身近な人を守ろうと奮闘する」姿も描かれるなど、ヒーロー映画としては真っ当な魅力も打ち出されています。 メタ的なギャグや構造も、「普通のヒーローになれない」彼らの悲哀につながるという、物語上でも必然性のあるものになっているのも秀逸でした。公開中の『もしも徳川家康が総理大臣になったら』にも少し通じている、「実は大真面目な精神が貫かれているコメディー映画」でもあるのです。
大筋の物語は予備知識がなくても楽しめますが、繰り出される細かなギャグやサプライズが「ファン向け」であることは事実。可能であれば、後述する『LOGAN/ローガン』を見ておくほか、「ディズニーが21世紀フォックスを買収した」などの「ヒーロー映画シリーズにもいろいろと大人の事情があった」ことを知っておくといいでしょう。
2:『ウォッチメン』(2009年)
ベトナム戦争やキューバ危機など、歴史上の事件の裏には監視者たち(ウォッチメン)が存在していた、というまるで現実の「IF」を見せてくれるようなヒーロー映画です。映画冒頭からスタイリッシュなアクションが展開しつつも、謎が謎を呼ぶ「探偵もの」のような物語も入り組んでいる、163分という大ボリュームの上映時間だからこそ重層的な内容になっていました。
エログロ描写以外にも、ヒーローたちが「平和とは何か?」と悩み、互いの主張を押し付けあい、皮肉に満ちた結末に導かれるなど、見る人をある程度は選んでしまうダークな要素がたくさんあります。しかし、「世界の問題を鋭くえぐる」シリアスな内容こそを求める人にはうってつけでしょう。映画では省かれたメッセージもある原作コミックや、2019年放送のテレビドラマ版を併せて見てみるのもおすすめです。