PTAを通す方法・通さない方法、それぞれの利点と弱点
こういった現状を考えると「保護者の要望を伝えるためにPTAやP連が絶対に必要」とまでは言えないと筆者は思うのですが、でももちろん効果が出ている場合や、見込める場合はよいのです。これからも続けたらよいのではないでしょうか。ただ、必ずしもPTAやP連を通さなくても、保護者が要望を伝え、実現するための方法はほかにもあります。うまくいかないときは、いろいろ試したほうがよいのでは。
まず、個人での要望も可能です。「個人では聞いてもらえないよ」という人もいますが、複数の保護者から同じような声が届けば、学校や教育委員会が動くことは、意外とある印象です。
ただし、個人で行う要望は「なかったこと」にされてしまうリスクもあります。クローズドなやりとりになるので、学校から「そんな要望を言っているのはあなただけ、対応しません」と言われてしまえば、それで終わりです。その点、保護者がある程度まとまって要望すれば、学校側も簡単に無視はできず、少なくとも「なかったこと」にはされづらくなるでしょう(要望が通るかどうかはまた別の話ですが)。
無視されづらい、という意味では、ある種権威を与えられているPTA・P連を通して要望をすることは、やはり有効でしょう。ただし、ある要望をPTAとして出してもらえるかどうかは内容にもよりますし、そこは会長さんや役員さんの判断になります。「PTAとしてこういう要望を学校に伝えてほしい」と頼んだけれど断られた、という話も割とよく聞きます。そういったときは保護者の「有志」で要望することもできます。
ほかにもある、要望を実現するためのルート
あとは、このところよく見かけますが、署名サイト「Change.org」を使って教育委員会などに要望を行う方法もあります。これなら必ずしも団体をつくらなくてもいいですし、主張や賛同者が可視化されるので「なかったこと」にされるリスクも避けられます。最近はP連が「Change.org」を使って要望をするケースを見かけることもあります。ワンイシューで要望するなら、かなり有効な方法では。さらに、議員さんに相談するというのも1案です。PTAやP連では通らなかった要望があっさり実現した、という話は実際、時々聞こえてきます。それはそれでどうかと思いますが(そんなことでいいのか)、いざとなればそんな手もあるわけです。
もっというと、テレビや新聞などマスコミを使う方法も考えられます。例えば、名古屋市では2024年度、学校に割り当てる予算が2023年度より4億円も増えました。これは地元のテレビ局である東海テレビが、市内の小中学校のPTAによる学校への寄付を徹底的に調べ上げ、市長に見解を求めたことなどにより実現しました。ほかの自治体でも、学校予算の増額を求める際、まねできる点があるのでは。
あれこれ書いてきましたが、つまり要望を実現するためのルートはいろいろあるわけです。「PTAでなければダメだ」と思い込んでいると、かえって実現が遠のいてしまうこともあるでしょう。もっと柔軟に試してみたほうがいいように思います。
最後に念のため、要望が通るかどうかはその内容にもよる、ということは言うまでもありません。どの方法で要望するにせよ、客観的に見て賛同を得られる要望かどうか、事前にほかの人たちにも意見を聞いてみるというのも大事なことかなと思います。
この記事の執筆者:大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。