ヒナタカの雑食系映画論 第101回

『ルックバック』や『帰ってきた あぶない刑事』も。2024年の「バディ映画」から見えてくる多様性と変化

2024年に続々と「バディもの」の映画が誕生していることにお気付きでしょうか。『ルックバック』『帰ってきた あぶない刑事』などから、バディ映画の変化と多様化を語ってみます。(※サムネイル画像出典:(C)藤本タツキ/集英社 (C)2024「ルックバック」製作委員会)

ルックバック
『ルックバック』2024年6月28日(金)より全国公開 (C)藤本タツキ/集英社 (C)2024「ルックバック」製作委員会
2024年には、続々と「バディ(相棒)もの」の映画が誕生しています。

2023年にもバディものの最高峰と言える『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』がありましたが、2024年はさらに多様なバディの関係性が描かれるようになってきており、今の時代ならではの変化も感じられるのです。主要な5作品を紹介しつつ、さらなる注目作を紹介しましょう。

1:『ルックバック』(6月28日公開)


『チェンソーマン』で知られる藤本タツキによる、2021年に『ジャンプ+』(集英社)で公開された読み切り漫画のアニメ映画化作品です。予告編での​​「原作の絵がそのまま動いている」様に度肝を抜かれた人も多くいましたが、実際の本編では繊細さのあるキャラクターが躍動感たっぷりに動く様も圧巻で、『あんのこと』の河合優実と『カムイのうた』の吉田美月喜の表現力にも涙腺を刺激されました。
ルックバック
(C)藤本タツキ/集英社 (C)2024「ルックバック」製作委員会
物語は、学生新聞で4コマ漫画を連載していい気になっていた小学生が、同学年の不登校の少女の家に卒業証書を渡しに行ったことをきっかけに、一緒に漫画を描くようになる、というもの。年相応のかわいらしさと不器用さのある、正反対の2人の「ずっと見たくなる」ほどの尊さと、その後はいわゆる「共依存」的な危うさが同居する関係性が描かれています。「創作」にまつわる寓話 ( ぐうわ)としても、漫画のアニメ映画化作品としても、1つの到達点といえる傑作です。
ルックバック
(C)藤本タツキ/集英社 (C)2024「ルックバック」製作委員会

2:『バッドボーイズ RIDE OR DIE』(6月21日公開)


『バッドボーイズ』のシリーズ第4弾で、物語は亡き上司に汚職疑惑がかけられ、その無実の罪をはらすべく警察官コンビが奔走するも、彼ら自身もまた追われる身になってしまうというもの。かたや常識人、かたやトラブルメーカーなコンビの活躍はユーモラスではありますが、まさに四面楚歌(そか)といえる状況下のハラハラも描かれます。PG12指定にも納得の刺激的なアクション&空の上でのスペクタクルは映画館向けです。

なお、劇中にはウィル・スミスが第94回アカデミー賞で起こした「平手打ち」の事件をメタフィクション的に捉えたようなシーンもあります。その時の彼の怒りは当然だと思う反面、自身のSNSで「全ての暴力は有害で破壊的」と謝罪した通りの問題は残り続けます。そんなウィル・スミスの罪と責任の大きさを踏まえた上での「これから」を、フィクションをもって鼓舞するような優しさが感じられました。

3:『ブルー きみは大丈夫』(劇場公開中)


母親を亡くした12歳の少女が、子どもによって生み出されたイマジナリー・フレンド(空想上の友達)“ブルー”たちの新たなパートナーを見つけるべく、彼らの存在が見える隣人の大人と相棒になり、奔走するという物語です。少女がちょっと頼りなくも見える大人と対等な立場で、誰かのための行動をする様は、「少し背伸びをしてビジネスパートナーになろうとしている」ようにも見えて、(ちょっと危うくもあると同時に)尊くほほ笑ましいのです。

設定は『屋根裏のラジャー』に近く、ファミリー向けのように思えますが、実際の作劇とメッセージはどちらかといえば大人向け。悪役は登場せず、淡々と進行する「渋い」タイプの作品なのです。意図的なあいまいに思える描写もありますが、それも「描かれていないことにも想像の余地を残す味わい」「心に不安を抱えた主人公の“創作”の物語」として、個人的には楽しめました。
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『帰ってきた あぶない刑事』で描かれる、有害な男性性からの脱却
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