ヒナタカの雑食系映画論 第101回

『ルックバック』や『帰ってきた あぶない刑事』も。2024年の「バディ映画」から見えてくる多様性と変化

2024年に続々と「バディもの」の映画が誕生していることにお気付きでしょうか。『ルックバック』『帰ってきた あぶない刑事』などから、バディ映画の変化と多様化を語ってみます。(※サムネイル画像出典:(C)藤本タツキ/集英社 (C)2024「ルックバック」製作委員会)

「距離が離れていても影響し合う」2人の関係性が描かれた映画も

バディものというジャンルからは少し離れるかもしれませんが、物理的な(精神的にも)距離は離れている、それでも強く影響し合う2人の関係性が描かれている映画もあります。

例えば、6月21日公開の人気エッセイの映画化作品九十歳。何がめでたい』で描かれるのは、人生崖っぷちの編集者が断筆宣言をしたおばあさんの元を訪ね続けていること。その後はなんだかんだで気の置けない関係になるのがほほ笑ましかったりもするのです。
 

さらには、以下もいい意味で「近すぎない」関係性が面白い映画でした。

『数分間のエールを』……MV制作を始める高校生とミュージシャンを諦めたばかりの教師。夢について正反対の2人の夢への絶望と希望が交錯します。
『碁盤斬り』……立場が異なるも囲碁をしている間は「清廉潔白」な間柄になるおじさん2人の友情。後半ではそれを打ち砕く事態が描かれるけ れど……?
『ディア・ファミリー』……娘を救うために大学を訪ねる工場の経営者と、人工心臓が10年でできるわけがないと冷静に考える学生。2人の考えは正反対だけれど……?

主要登場人物は3人だけど、「2人になった時はまさにバディ」な映画も

さらには、基本的には主要登場人物を3人に絞った上での関係性を描きつつ、2人になった時はまさにバディに思える映画も公開されています。

『チャレンジャーズ』…テニス界の元スター選手と、彼女を愛する親友同士のテニス選手の10年以上の愛情を描いた物語。下世話な三角関係が描かれつつ、ラストには今までにない衝撃的な映像と決着が!
 

『ホールドオーバーズ置いてけぼりのホリディ』(6月21日公開)……嫌われ者の教師、母親が再婚した学生、息子を亡くした食堂の料理長の3人がクリスマス休暇を寄宿学校で過ごす。「この時だけ」の関係性を描いた物語が染みる1本です。
 

今後はアメコミ原作のヒーローのバディものが続々!

さらに、今後の期待作は、アメコミ原作のヒーロー映画。くしくも3本がバディものだったのです。

『デッドプール&ウルヴァリン』(7月24日公開)……破天荒な言動ばかり×マジメな2人の相性は最悪(?)。7月26日のアメリカの公開日から“2日前倒し”になったことも話題に。
 

『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』(10月11日公開)……悪役ジョーカーと、その恋人であるハーレイ・クインが登場。日本でも興行収入50億円を超える大ヒットとなった『ジョーカー』の続編です。
 

『ヴェノム:ザ・ラストダンス』(11月1日公開、10月25〜27日先行上映)……今回も中年男性×奇声生物の夫婦漫才も見どころなのは間違いない、シリーズ第3弾にして完結編です。
 

そして、こうして2024年のバディものを振り返ると、型通りの「友人」「恋人」とは異なるばかりか、さらには「相棒」というくくりとも違うとさえ思えたりもする、複雑で豊かな関係性を紡いだ、やはりバディものの変化と多様化が進んでいるように思えるのです。

創作物の関係性から、「こういうのもいいなあ」と現実で似た関係性を築いたり、そもそも現状で築いている関係性を大切に思うことも、いいことなのかもしれませんよ。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
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