ヒナタカの雑食系映画論 第101回

『ルックバック』や『帰ってきた あぶない刑事』も。2024年の「バディ映画」から見えてくる多様性と変化

2024年に続々と「バディもの」の映画が誕生していることにお気付きでしょうか。『ルックバック』『帰ってきた あぶない刑事』などから、バディ映画の変化と多様化を語ってみます。(※サムネイル画像出典:(C)藤本タツキ/集英社 (C)2024「ルックバック」製作委員会)

4:『ドライブアウェイ・ドールズ』(劇場公開中)


ドライブに出かけた2人の女性が、謎のスーツケースを巡った事件に巻き込まれるクライムコメディーなのですが、「これでPG12指定止まりで大丈夫!?」と心配になるほど、遠慮のないバイオレンスとえげつない下ネタが満載の内容で、その印象はさながら汚い『テルマ&ルイーズ』。好き嫌いが分かれるのは間違いないですが、85分の短い上映時間で、いい意味で悪趣味な笑いをサクッと楽しみたい人にはピッタリでしょう。

また、真面目な性格の主人公はレズビアンで、はちゃめちゃな言動をする友人との距離感には悩んでいるけれど、レズビアンであることそのものには悩んでいません。ヤバい状況下でも己の道を突き進んでいく様はどこかすがすがしく、現代にもっとあってほしい「元気が出る明るいLGBTQ+映画」でもあるのです。けんかしつつも仲の良い関係性を求める人にもおすすめです。

5:『帰ってきた あぶない刑事』(劇場公開中)


人気シリーズの8年ぶりの劇場作品です。主人公の2人を演じる舘ひろしと柴田恭兵は現実では70代となり、劇中にも「もう年」な自虐ネタもあって少し切なかったりもするのですが、それ以上に元気で、相変わらずの相棒とのしての距離感や信頼が心地良い……そんな関係性の尊さは、初めて『あぶない刑事』を見る人にも伝わるでしょう。

出色なのは、今回のゲストキャラクターである土屋太鳳。ハーレーを乗りこなす彼女の姿そのものがカッコいいのですが、今もなお独身である主人公2人と、「その2人のどちらかの娘かもしれない」彼女との、格式ばらない「家族」のような、それともちょっと違うような「強制させない」関わりもまた気持ちが良いのです。

ちなみに、「日米あぶない刑事祭り!」と称した、配給会社の垣根を越えた『バッドボーイズ RIDE OR DIE』×『帰ってきた あぶない刑事』コラボ映像が作られていたりもします。くしくも、男性同士の関係性で生まれてしまいがちな、過度に男らしさを誇示したり一方的な価値観を強制する「有害な男性性」からの脱却と思しきシーンがあることも、両者は共通していました。
 

劇場公開中のバディ映画は他にも!

こうして振り返ると、小学生の女の子2人、少女と大人の男性、レズビアンの女性2人、そしていい年の重ね方をした刑事2人(2作品)と……さまざまな形なバディものが作られていることが分かるでしょう。

さらに、2024年に公開のバディ映画には以下もあり、やはり多様なキャラクター性の関係性が描かれていいます。

『朽ちないサクラ』(6月21日公開)……県警の広報職員の女性×年下で同期の青年。親友の変死事件の謎を追うサスペンスで、ある過去を抱えた上司との関係も重要でした。
 

『蛇の道』……娘を殺された中年男性×精神科医の女性。復讐のため結託するインモラルなサスペンス。目つきが鋭く淡々と行動する柴咲コウが“恐ろしい”存在感を発揮しています。
『ライド・オン』……スタントマン×馬。ジャッキー・チェンが現実の本人と重なるスタントマンに扮(ふん)して、「家族」ともいえる馬との友情も描かれます。
 

『辰巳』……裏稼業で生きる孤独な男×姉を殺された少女。『レオン』的な危うい関係性でのバイオレンスサスペンスが展開します。
『ゴジラxコング 新たなる帝国』……タイトル通り2大怪獣が共闘。「もはやヤンキー映画」「セリフがないのに何を言っているのかが分かる」ことも話題に。
 

『違国日記』……変人な小説家の女性×利発な15歳の少女。歳の離れためいとの共同生活での変化が描かれます。
『マッドマックス:フュリオサ』……孤独な女戦士×警護隊長の男性。中盤からの共闘。後の『怒りのデス・ロード』での主人公の関係にもつながっていることも話題に。
『デッドデッドデーモンズデデデデストラクション』(前章/後章)……不思議ちゃんっぽい女の子×真面目に見える女の子。明日死ぬかもしれない絶望的な世界で友情を超えて「絶対」になる関係性が描かれます。
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『九十歳。何がめでたい』『チャレンジャーズ』、最新アメコミ映画もバディもの?
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