細田守監督のほか、そうそうたるクリエイターが絶賛
「夏休みのアニメ映画」の代表格ともいえる細田監督作品の「3年周期」が途絶えた(その理由は不明)のは残念ではありますが、これから先もアニメ映画の期待作は待ち受けていますし、15周年を迎える細田監督作『サマーウォーズ』は、7月26日より2週間限定で全国140館の上映が決まっているので、こちらを楽しみにするのもいいでしょう。そして、その細田監督をはじめ、『魔法少女まどか☆マギカ』(MBSほか)の新房昭之監督、『かがみの孤城』の原恵一監督、『鋼の錬金術師』(MBS/TBS系)の水島精二監督など、そうそうたるクリエイターが絶賛コメントを寄せたアニメ映画が6月14日より公開中。それは原作のない、完全オリジナル作品の『数分間のエールを』です。
実際に見てみればアニメのクオリティを突き詰め、夢のまぶしさと挫折が交錯する青春の物語、直球のメッセージ性を、たった68分の上映時間に凝縮させ表現しきった「文字通りにクリエイターの執念が見える傑作」だったのです。
後述する理由もあって若者にはもちろん大人にも届いてほしいですし、劇中の季節感(物語の始まりは4月)もあいまって「爽やかなアツさ」があるため、本格的に夏が始まる前の今に見るのもピッタリでした。
そして、本作には「劇場で絶対に見逃さないでほしい」「細田監督作ファンにも全力でおすすめしたい」明確な理由もあります。さらなる5つの魅力を記すとともに、細田監督が寄せたコメントにある「俺もそうだったな」という言葉の意味も解説していきましょう。
1:「夢がまだこれから」「夢を諦めたばかり」の2人が出会う物語
『数分間のエールを』の主人公は「自分から何かを生み出したい」と思い続け、ミュージックビデオ(以下、MV)制作に没頭している高校生。彼はある日、街で見かけたミュージシャンの歌声と曲を聴き、この歌のMVを作りたいと強く願います。そして、自分が通う高校へ新しく赴任してきた教師こそが、街で歌っていたミュージシャンだったのです。 その偶然の出会いと再会から、主人公は教師へ「MVを作らせてください!」と全身全霊でお願いをします。「夢がまだこれから」の高校生が自ら選んだ道へと踏み出す一方で、教師は「夢を諦めたばかり」という正反対の立場なのです。 そして、物語が進むごとに、教師が尋常ではない努力をして、どれだけ多くの数の楽曲を創作してもなお、音楽の道を選ぶことができなかった悲哀も、よりはっきりと伝わるようになっています。ただポジティブに惚れ込んだ歌声と曲のためにMVを作ろうとする、「まぶしい」ほどの主人公。その気持ちはうれしいけれど、「自分の気持ちにはウソはつけない」教師。それぞれの立場から、希望と絶望がとなり合わせの「青春」と「夢」が交錯します。 その対比構造から、2人の残酷なまでの「ズレ」を見せ、「それでもなお」な行動を起こすドラマは、今まさに「夢がまだこれから」の若者はもちろん、その「夢の先」を経験した大人に響くものでしょう。
2:創作のワクワクにあふれたアニメ表現
本作が「MVの制作集団によるMVをテーマにした映画」であることも重要です。フリー3DCGソフト「Blender」をメインツールとして制作が行われており、他のアニメ映画とは全く異なる味わいや、その表現の大胆さや豊かさも大きな見どころになっているのです。 世界観やキャラクターデザインは親しみやすく美しくて爽やかで、劇中のMVはポップかつおしゃれ。さらに面白いのは、「創作の過程」のイメージを、アニメで表現していること。MV制作をよく知らない人でも、「頭の中にあるものを形にする」様にワクワクできるのではないでしょうか。本作を作り上げたのは、若者から圧倒的な支持を得ているクリエイターチーム「Hurray!(フレイ)」。ロックバンド「ヨルシカ」のMVや、テレビアニメ『可愛いだけじゃない式守さん』(テレビ朝日系)のエンディング映像などで活躍しています。
今回の『数分間のエールを』でHurray!の3人は、監督・演出からキャラクターデザインまでを担当。試写の開催後もクライマックスのブラッシュアップを続けており、クオリティを突き詰めていることは実際の本編を見て分かるでしょう。 なお、Hurray!の代表であり監督のぽぷりかは、2021年のアニメ映画『映画大好きポンポさん』(平尾隆之監督)に、本作が強い影響を受けていると明言しています。全編においてあふれんばかりのクリエイターの情熱や執念、制作(編集)過程の「ビジョン」をアニメならではの表現をしたことなど、多くの共通点を見つけられるはずです。