話題になる前の富士河口湖町
そもそも富士河口湖町は、日本に来た外国人観光客がこぞって来るというわけでもなく、決まったお祭りの日(河口湖湖上祭)以外はどこへ観光に行ってもパーソナルスペースが十分に確保できるのんびりとしたところでした。それが2013年、富士山およびその周辺スポットがユネスコ世界文化遺産に登録されたことを機に一気に外国からの観光客が増加。外国語対応、ホテルなどの宿泊施設、レンタカー、レンタサイクル店など需要に対して供給が追い付いてきたのはここ数年でやっとといった状況です。
駅前について言及すると、観光客に応えようといくつか食事を提供するスポットが増えましたが、駅前の道路は現在も昔ながらの生活道路のままです。もともとが車社会であり、駅前とはいえ世界遺産登録までは「歩いている人」が珍しいくらいでした。
コロナ禍にいったんその状況に戻り、その後一気に世界から人が過集中する事態が起こり、富士河口湖町だけでなく近隣の富士吉田市、ひいては富士山周り全体が初めてづくしのオンパレードに困惑しながら必死で対応しているのではないかというのが正直な感想です。
まだまだ地元側の受け皿が出来上がるまでの過渡期にあると言っても過言ではなく、今回の「黒幕設置」のように1つずつ試してみて解決・共存策を模索していくほかありません。
この事態は、観光地もSNSも過渡期にあるからこそ
今回の騒動はSNSの力があってこそでした。世界のSNS利用者数は、2022年の45億9000万人から2028年には60億3000万人に増加する(総務省「令和5年 情報通信に関する現状報告の概要」)と予測されており、2023年10~12月期の国土交通省観光庁の調査では、訪日外国人が出発前に役立った旅行情報源として1位「動画サイト」(37.5%)、2位「SNS」(35.0%)、3位 「個人のブログ」(27.2%)との結果が出ています。
つまり、今後も受け入れ体制が整わないうちにSNSにより突如観光スポットとなってしまう「富士山×ローソン」のような問題は各地で起こり得るでしょう。
しかしながら、観光地側が過渡期であるようにSNSも過渡期にあります。最近でも大手プラットフォームのサブスク化やアプリ内課金などSNSを取り巻く状況は目まぐるしく変わってきています。
実際、今までリテラシーが個人に委ねられたメディアだったものが2024年2月からは、EU(欧州連合)がデジタルサービス法(DSA)を適用し、巨大プラットフォーマーに対して仕組みの整備などを求めることとなりました。これによりプラットフォーム側の対策も徐々に進むのでは、と希望が持たれます。
今のところ著作権侵害やフェイクニュースが大きく問題になっていますが、「映え」のために私有地に立ち入って撮影したものが「有害コンテンツ認定」となる未来もそう遠くはないのではないでしょうか。