5:マリーナベイ・サンズの上の部分は滑る
シンガポールを代表する高級リゾートの「マリーナベイ・サンズ」でのスペクタクルが本作の最大の見どころといっていいでしょう。びっくりするのが、海賊がロケットランチャーを持っていることはまだしも、コナンと怪盗キッドがその弾を(街のほかの場所を破壊させないように)マリーナベイ・サンズに撃つように誘導していること。コナンは「当てたか!」と確信し、キッドは「ふっ」と笑っていたけど、それでいいのか!
そして、マリーナベイ・サンズの上の部分だけがポロッときれいに取れて、滑って海の上に落ちていく(しかもキッドに宙吊りにされた海賊にぶち当たりそうにもなる)様は笑わずにはいられません。脚本家の大倉崇裕は「こんな景色見せられたら、やっぱりやりたくなるじゃないですか、『アレ』を」とXに投稿しており、本当にこれが「やりたかったこと」なんだろうと思うとより笑顔になれます。
そのマリーナベイ・サンズの上の部分には主要キャラクターみんながいたのですが、もちろん全員生存(※普通は死にます)。その後に絆創膏の裏に貼った写真のことを知った園子(髪を下ろしているのがかわいい!)と京極さんのイチャイチャを見た蘭が「ラブラブねえ」と言うけど、この大惨事(※誰も死んでない)に対して、ほのぼのムードなのがすごすぎます。
さらに、エンドロール後では、キッドが新一に変装していたと蘭が気づいていたことも明らかに。「いや、そっちに気づいたんだったら、色黒になってアーサー・ヒライと名乗っているだけのコナンの方にも気づけよ!」と最後までツッコませてくれます。
なお、「映画の中とはいえシンガポールをこんなことにして怒られないの?」と心配になっている人もいるかもしれませんが、 シンガポール政府観光局が「協力」としてクレジットされていますし、シンガポールで本作を見た人から「マーライオンに血を吐かせたりマリーナベイ・サンズの上の部分が滑っていくシーンで爆笑が起こっていた」という報告がSNSで複数寄せられているので、たぶん問題ないでしょう。
まとめ:ファンの期待にこれだけ応えている
そんなわけで、ツッコミどころを超えた爆笑ポイントと、さすがにどうかと思うツッコミどころもある『名探偵コナン 紺青の拳』ですが、その実ファンの期待に大いに応えて入れ込んでいることは、掛け値なしに称賛できると思います。・コナンに「シンガポールかよ〜」と言わせる
・人気キャラクターの怪盗キッドと京極さんを活躍させ対決もさせる
・京極さんと園子のラブストーリーも描く
・『名探偵コナン』らしく殺人事件も描く
・せっかくシンガポールを舞台にしたんだから、マーライオンには血を吐かせるし、マリーナベイ・サンズは爆発させ上の部分を滑らせる
これらの要素をまとめるのはむちゃだと思えますし、実際にむちゃすぎる場面も出てきていますが、それすらもツッコミつつもほほ笑ましく見られるうえに、爆発も起こるアクションの派手さや、いい意味で悲鳴をあげて喜べるキャラ萌えがさらに加速しているのが、近年の劇場版『名探偵コナン』の「らしさ」であり魅力といえるのではないでしょうか。
本日4月12日より劇場公開中の『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』でもキッドが大活躍していそうですし、愛すべきツッコミどころにもむしろ期待しています。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。