4月6日、東京オペラシティコンサートホールにて、TBS系日曜劇場『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』のコンサートが行われました。劇中で“晴見フィルハーモニー”メンバーが奏でる曲を実際に演奏した特別オーケストラによるコンサートの全容は?
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ドラマのワンシーンがよみがえる!リアル体感のアパッシオナート
今回コンサートを行った「さよならマエストロ特別オーケストラ」のメンバーは、劇中の音楽を全て演奏し、出演者に演奏指導を行った東京音楽大学の学生と教員によって編成された特別オーケストラ。実は、晴見フィルのコンサート会場の撮影も、東京音大で行われました。会場には、才能あふれるチェリスト・羽野蓮を演じた佐藤緋美さんと、指揮者になることを夢見る高校生・谷崎天音を演じた當真あみさんも登壇! 劇中で芦田愛菜さん演じる夏目響が弾くバイオリンの音を演奏した渡邊紗蘭さんや、西島秀俊さん演じる夏目俊平に指揮の指導をした広上淳一教授らも登場し、たくさんの劇中音楽と撮影秘話が披露されました。
最初の演目は、『ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」より 第1楽章』。第1話で晴見フィルが初めて俊平と合奏をした、誰もが知るあの曲。俊平が出した宿題「ダダダダーン!」をどう捉えるか、をオーケストラのメンバーで話し合うことで絆を深めました。
2曲目は、響がかつてコンクールで演奏した、『メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲』。演奏をした渡邊沙蘭さんは、芦田愛菜さんと年齢も出身も同じということで、運命的なつながりを感じながら演奏指導に取り組んだそうで、響がバイオリニストの人生をかけた渾身の1曲が生で披露されると、盛大な拍手が沸き起こりました。
3曲目は、『ロッシーニ:歌劇「ウィリアム・テル」序曲』。美しいがゆえにオケの調和を乱してしまうフルーティスト・倉科瑠李(新木優子さん)と、音楽によって家族が壊れてしまったトラウマを持つ天才チェリスト・羽野蓮(佐藤緋美さん)が“晴見フィル”に加わって、初めて合奏したこの曲は、強く華やかな1曲。佐藤さんは「(会場で演奏している)先生の指導のもと一生懸命に練習し、チェロが弾けるようになりました。楽器は元々ピアノやドラム、ギターが弾けましたが、チェロは弓もあり(同じ弦楽器でもギターとは)全く違う。だから面白かった」と語りました。
さらに4曲目は、数々のドラマ音楽を作った菅野祐悟さんが作曲した「晴見シンフォニー」。俊平と晴見フィルの即興演奏から生まれ、俊平の才能と晴見フィルへの思いが詰まった1曲。晴見の広い空へと向かって奏でるような森大輝(宮沢氷魚さん)のトランペットソロから始まり、それを優しく包む古谷悟史(玉山鉄二さん)のファゴット、これから何が起こるのかワクワクが始まりそうな内村奈々(久間田琳加さん)のティンパニと、それぞれの音によりドラマシーンが鮮明によみがえり、涙が出そうに……!
休憩を挟んでゲストとのトークコーナーでは、佐藤緋美さん、當真あみさん、坪井敏雄ディレクターの撮影裏話に。ドラマの中で唯一、自身のバイオリン演奏を披露した當真さんは「8話の最後で弾いた“キラキラ星”は前日に音を撮って、当日はそれに合わせて弾きました。現場は寒くてとても緊張したけれど、皆さんに囲まれてすごくたくさんの応援をもらって、すてきなシーンになったと思います」と語りました。佐藤さんもこのシーンの撮影について「すごく上手な演奏で、みんな(感激して)泣きそうでした!」と振り返りました。
また、会場の客席にはなんと、コンサートマスター役を務めた津田寛治さんが、観客の1人として来場。そんな、マエストロ愛あふれる津田さんについて広上教授は「津田さんは恵比寿のカラオケに通って、毎日8時間くらい(バイオリンを)練習していた。役者のプロ魂はすごい。ドラマの撮影現場の情熱に感激し、本編を見て何度も泣きました」と語りました。
ドラマのワンシーンを再現した“指揮者体験”も!
ゲストトークと指揮者体験が終わると、後半5曲目は『ドヴォルザーク: 交響曲第9番「新世界より」より 第2楽章』。日本では「遠き山に日は落ちて」として知られるこの曲は、第8話で何度も流された情緒あふれる1曲。そしていよいよプログラム最後の6曲目は、『シューマン: 交響曲第3番「ライン」より 第1楽章』。俊平と晴見フィルがラストシーンに空港で演奏した感動の1曲が演奏されると、会場中がたくさんの拍手の音に包まれました。
鳴りやまない拍手の中、アンコールで演奏されたのは、『バッハ:G線上のアリア』と、ホセ・ラカジェ作曲の『アマポーラ』。『アマポーラ』は劇中で“うたカフェ”のオーナーの小村二朗(西田敏行さん)が誕生日に演奏した、晴見フィルにとって思い出の曲で、またもドラマで感じたハートフルな気持ちがよみがえりました。
マエストロ愛があふれる! 坪井敏雄ディレクターの単独インタビュー
今回、ドラマの演出を担当した坪井敏雄ディレクターに単独インタビューをすることができました。坪井ディレクターはキャストの演技を振り返り、「西島さんは初めての指揮者役でしたが、広上マエストロから指導を受け、本当に真摯(しんし)に指揮練習に取り組んでいました。“とにかく音楽を聴き込んで体に入れてください。そうすれば自然に体が動きます”と指導を受け、曲も動きも完璧に覚えていました」とコメント。俊平が「バッハ先生」など作曲者に“さん付け”しているのも、広上マエストロがしていたことをそのまま役に取り入れたそうです。
また、撮影に関しては「演奏シーンで最初に手ごたえを感じたのは、2話のウィリアムテルの演奏シーン。その日は朝からずっと演奏撮影をしていて、夜に最後のカットの撮影が終わった後、キャストとスタッフが感じた演奏への高揚感がものすごくて、指揮の練習で苦労していた西島さんが笑顔で“指揮って楽しい!”と言ってくださいました。晴見フィルのキャスト全員が“まだやりたい”と現場を離れないほどで、この時の熱い感情は今でも鮮明に覚えています」と振り返りました。
最後に「広上マエストロをはじめ東京音楽大学の皆さまには準備から最後の演奏シーンまで、多大なお力を頂戴しました。本当に、感謝しかありません。そして今回のコンサートでたくさんのお客さまにお越し頂き、こんなに皆さまに愛されていたドラマだったのかと体感することができました。僕たちテレビの人間にはあまりない、貴重な体験をさせて頂きました。また皆さまの前で晴見フィルが演奏できる事を望んでおります」と思いを語りました。
『さよならマエストロ』の続編と、コンサートが再び開催されるのを、期待せずにはいられないですね!
この記事の筆者:栗原なお
テレビ局関連会社の宣伝部でドラマの公式Webサイトなどの制作に携わる。その後、編集プロダクションやエンターテインメント専門誌の編集を担当。現在はライターとして、長年のマスコミ業界での経験を生かしたコラムの執筆をはじめ、取材やインタビュー活動も行う。