【余韻】NHK夜ドラ『作りたい女と食べたい女』シーズン2完結! 人を前向きにさせる「料理」の魅力

2024年1月から待望の続編がスタートしたNHK夜ドラ『作りたい女と食べたい女』。考えさせられるエピソードが多い中、思わず頬がゆるむのが食べ物のシーン。今回はドラマに登場する料理を振り返りながら、「つくたべ」の魅力について考えます。

「ハレ」の間柄から「ケ」の仲に

続くシーズン2は、野本さんと春日さんが親子丼を一緒に作るエピソードからスタート。2人でキッチンに立ち、料理を作り、おいしさを共有する。前作の世界観をそのまま引き継いだ温かなシーンで、ブランクを感じさせません。
  2人の関係性が少し変わってきたことが分かるのは、餅を使ったアレンジのエピソードです。クリスマスや年末年始でたくさんお金を使ってしまったため、節約生活を余儀なくされた2人。しばらくは別々に食事をとることにしましたが、正月に買った餅が余っていたことを機に、一緒に節約料理も楽しむようになります。

これまでの2人は、デカ盛りなどの夢を形にした料理を楽しむ「ハレの日」の間柄でした。節約も共有する「ケ(日常)」の仲になった、と示しているのではないでしょうか。

感情を表に出さない春日さんにも変化が

2月の節分。恵方巻を自分たちで作るべく具材を探すシーンでは、穴子の前で立ち止まる春日さんが印象的でした。穴子を入れれば市販の恵方巻よりも高くなりますが、2人は自分たちで好きな具を好きなだけ入れられる楽しさの方に価値を見いだします。
  「キレイに巻けましたね!」と、野本さんに褒められた時の、春日さんのはにかんだような笑顔! 普段あまり表情に出ない分、うれしさが伝わります。

春日さんは幼少期から抑圧された環境で育ち、自分の気持ちにフタをして生きてきました。「野本さんは、私が食べたいものを思い切り食べても受け入れてくれる」。春日さんの表情が回を追うごとにやわらかくなり、野本さんが特別な存在になっていることを私たちに伝えます。

2人を取り巻く登場人物にも注目

シーズン2は主要な登場人物が増え、それぞれが抱えている事情や価値観を織り交ぜながら物語が進んでいきます。
  レズビアン&アセクシャルの矢子さんは物語の中で、野本さんからの恋愛相談を受けるメンターのような役割を果たします。もう1人の南雲さんは野本さん&春日さんと同じマンションに住むご近所さん。春日さんの恋愛相談を受けるなど、友人として心を通わせていきます。この2人のおかげもあって、野本さんと春日さんは互いの気持ちを確かめ合うことができました。

また、南雲さんは過去のトラウマから、他人との食事を苦痛に感じてしまう「会食恐怖症」に悩む人物。SNSでは「このドラマをきっかけにこういう病気を知った」という声も多く聞かれています。
  夜中のドーナツ作り、レトルトカレーを食べ比べる会、タコ焼きパーティー。飲み物だけで参加する南雲さんですが、ほかの3人は無理強いすることなく、自然な様子で接します。

料理が人を前向きにする

「おいしいものって、前向きにさせてくれる力があるように思います」とは、春日さんのセリフ。野本さんと春日さんは料理を通じて互いを思いやり、南雲さんは最終回で克服への一歩を踏み出しました。
『作りたい女と食べたい女』(KADOKAWA)コミックスは現在5巻まで発売中
『作りたい女と食べたい女』(KADOKAWA)現在5巻まで発売中
人間は共食(ともに食べる)する唯一の生き物といわれているそう。「つくたべ」を見ていると、好きな人とおいしい料理を楽しむ時間を今以上に大切にしたいと思えてきます。

原作漫画は現在も連載中です。ぜひシーズン3にも期待しましょう!

この記事の筆者:田窪 綾 プロフィール
調理師免許を持つフリーライター。約8年間のレストラン・キッチン勤務経験を生かし、食分野を主軸に活動中。飲食店&新商品取材、オーナーインタビュー、グルメコラムを中心に、「ツギノジダイ」「近代食堂」など複数メディアで執筆を行う。
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