立て続けのドラマ出演でも見事な演じ分けを披露
次なる作品は、『スタンドUPスタート』です。この作品で山下さんは、融資部門の銀行員である羽賀佳乃を担当。これまでの役とガラリと変わり、クールで仕事ができる優秀な女性を演じます。かと思えば、『弁護士ソドム』では、変装が得意な元結婚詐欺師・三木天音を熱演。とらえどころのない性格の女性で、ドラマ内ではナース姿など変装した姿も好評を集めました。天音は複雑な過去を持つ役で、コロコロと表情が変わり、時には感情を爆発させる演技も見せます。
そして、『さらば、佳き日』では主演を務め、兄妹ながら「新婚夫婦」として仲むつまじく生活する広瀬晃を演じました。
この作品で、山下さんは“静”の好演技を見せます。禁断とも言える「兄妹の愛」を描いた作品で、晃の内に秘めた感情を見せるために繊細な演技が必要。山下さんとしても挑戦作になったことでしょう。
正直言えば、もっとドロドロした映像になるかと思いきや、原作に近い爽やかで愛情あふれるドラマとなりました。晃の兄・桂一を演じた鈴木仁さんとのコンビネーションも良く、ここでも俳優としての評価を上げます。
クセのあるキャラクターも見事に熱演
休む暇もなく作品に参加し、なおかつクセのある役ばかり演じている山下さんですが、日曜劇場作品の『下剋上球児』でも一味違ったキャラクターを担当します。演じた根室柚希は、両親を早くに亡くし、弟・知廣を親代わりに育てる強くやさしい女性。しっかり者で、ふさぎ込みがちだった弟を一生懸命に応援し、励まします。太陽のような存在であり、母性に満ちた役はキャリア・年齢を考えると山下さんには難しそうでしたが(しかも伝統ある日曜劇場作品!)、しっかりと演じきりました。ここでも、まさに“等身大”の役作りのうまさが生かされることになります。
現在放送中の『Eye Love You』では、ショコラティエの真尋を務めますが、これまたクセがある“恋愛強者”。
二階堂ふみさん演じる主人公・本宮侑里の恋を後押しする役ですが、自分の恋愛はまるっきりダメで、どこかチャーミングでコミカルな女性です。2024年冬ドラマの中でもベタな恋愛ストーリーが人気となっている作品で、恋に一生懸命で憎めない真尋がいい味を出し盛り上げています。
卒業後はさらなる進化にも期待!?
ここまで何度も「等身大の演技」と山下さんを称賛してきました。この「等身大」が演技では非常に難しく、演じられる俳優はそんなに多くありません。それぞれの作品で与えられたキャラクターがどういった役割を持ち、その上でその役の特性や職業、家族構成まで全て理解し演じなければ成立しません。考えなしに「20代のOL」を演じれば良いわけではなく、キャラクターのストーリーをしっかり理解しないと、視聴者が見てストレスがない「等身大の演技」は完成しません。それを、まだ俳優歴が長くない山下さんは、しっかりと演じ分けているわけです。
さらに、現在はトップアイドルとしての活動もありますから、俳優業にさける時間はそう多くはない。そう考えると、卒業後はさらに俳優として躍進する可能性を秘めていることになります。
さて、そんな山下さんは卒業に向け、乃木坂46のメンバーとして2024年4月10日にセンターを務める35枚目のシングル『チャンスは平等』をリリース。さらに、4月23日には2nd写真集『ヒロイン』(小学館)を発売します。乃木坂46のメンバーとしての活動期間は短くなってきましたが、その勇姿をしっかりと目に焼き付けながら、今後のさらなる躍進を期待しましょう。
この記事の筆者:ゆるま 小林
長年にわたってテレビ局でバラエティ番組、情報番組などを制作。その後、フリーランスの編集・ライターに転身。芸能情報に精通し、週刊誌、ネットニュースでテレビや芸能人に関するコラムなどを執筆。編集プロダクション「ゆるま」を立ち上げる。