ビジネス用語「たたき」の意味とは? 類語や「たたき台」を使うときのマナーも解説

ビジネスシーンにおいて「たたき」とは、「試案」として使われます。「たたき」の語源、類語や言い換え表現、「たたき台」の例文、実際に使う際のビジネスマナーについて解説します。

たたきの意味
「たたき」とは? 意味や使うときのマナーを解説

「たたき」という言葉をビジネスシーンで聞いたことのある人は多いでしょう。特に、企画資料を扱う部署ではたびたび使われている言葉です。何となくで使っている人も、中にはいるのではないでしょうか。本記事では、ビジネス用語の「たたき」の意味や語源、類語や言い換え表現、「たたき台」の例文などについて、現役フリーアナウンサーの新保友映が解説していきます。

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<目次>
ビジネス用語「たたき」の意味とは?
ビジネスシーンで役立つ「たたき台」を使った例文
「たたき台」の類語・言い換え表現
「たたき台」という言葉を使うときのビジネスマナー
まとめ

ビジネス用語「たたき」の意味とは?

「たたき」と聞いて、魚や鶏肉などを包丁で叩いて作る料理を真っ先に思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。ビジネスシーンにおいて「たたき」とは、「試案」として使われます。まずは「たたき」の語源について、詳しく解説していきます。

・「たたき」の語源
「たたき」は、動詞の「叩く」が語源です。「叩く」は、手や手に持ったもので衝撃を与えることです。似た単語に「打つ(うつ・ぶつ)」がありますが、その違いは「衝撃を与える回数」です。諸説ありますが、「叩く」の語源は「たた」という擬音といわれており、音声言語学においてt音は「硬い物がぶつかる際に鳴る中音を表すことが多い」と見られています(机を叩く音「トントン」、タイピング音「タンッ」など)。なお、料理の「たたき」は肉を叩くことから、後述する「たたき台」は鍛冶屋が金属を叩いて形作ることから、そう呼ばれています。

・「たたき」は「たたき台」を省略した言葉
ビジネスシーンにおける「たたき」とは、「たたき台」を省略した言葉です。「たたき台」とは、「より良い成案を目指して意見や批評によって練り上げてゆくための、もとになる案」のことです。鍛冶屋は、熱い金属を何度となく叩き、時間をかけて繊細に作品を作りゆくものですが、時間をかけて何度もブラッシュアップを重ねる試案とも重なる部分があるでしょう。ビジネスシーンにおける「たたき(台)」は、ここから来ています。

ビジネスシーンで役立つ「たたき台」を使った例文

先述したように、「たたき(台)」は「試案・下書き」という意味です。ビジネスシーンでは、資料や企画案などに使われます。ここでは、「たたき」「たたき台」を使った5つの例文をご紹介します。

【例文】
「たたき台で構わないので、来週までに今期プロジェクトの資料を作成してほしい」
「次回の打ち合わせで使う資料を、まずはたたきの段階で提出してくれ」
「このたたき台に肉付けする形でアイデアを出していこう」
「例の企画のたたき、方向性は良いのでブラッシュアップして再提出してください」
「〇〇という趣旨をくんだうえで、たたきの作成に取りかかってください」

「たたき台」の類語・言い換え表現

「たたき台」には、さまざまな類語・言い換え表現があります。本記事では、以下の4つの類語・言い換え表現を紹介していきます。

・原案(げんあん)
・草案(そうあん)
・ドラフト
・アウトライン

なお、それぞれの意味・定義については『大辞林 第二版』(三省堂)を参照しています。

・原案(げんあん)
「原案(げんあん)」とは、国語辞書において「討議・検討を加えるための最初の案」と説明されています。また、「修正案などに対していう」とも記載があり、前文の定義と照らし合わせても「後々直すことを前提としたニュアンス」が含まれていると言えそうです。また、「たたき(台)」よりやや硬い表現です。

・草案(そうあん)
国語辞書における「草案(そうあん)」とは、「規約などの文章の下書き」とあります。「規約など」と言ってもその幅は広く、長文短文問わず、創作作品から企画案などテキストで表されるもの全般を指します。単純に「たたき台」や「原案」と互換することも可能ですが、より内容が具体的であるニュアンスを含むこともあります。

・ドラフト
「ドラフト(draft)」とは「下書き」の意味で、英和辞典にも同様に「下書き、草稿、草案、下図」とあります。英語の「draft」は「draw(引く)」を語源とし、古英語では「水を引く」という意味で使われていました。後に「草案(下書き)」という意味を持ち、今に至ります。

・アウトライン
「アウトライン(outline)」とは、「輪郭」「あらまし、あらすじ、大要」を指す言葉です。英和辞典でも同様に「概略、概要、あらまし、要旨」「輪郭、外郭、略図」と説明されています。動詞の場合には「要点を述べる、概略を言う」「略図を描く」という意味もあり、「たたき(台)」と比べて「要点のまとめ、案の輪郭像」というニュアンスが含まれる言葉です。

「たたき台」という言葉を使うときのビジネスマナー

最後に、「たたき台」を使うときの3つのビジネスマナーや、注意点を解説します。多くの人が間違いがちなものもあるため、それぞれ確認してください。

・社外の人間には使用を控える
1つ目は「社外の人間には使用を控えること」です。「たたき(台)」は、ややくだけた表現です。そのため、社外の人への使用は失礼にあたることがあります。「原案」や「草案」と言い換える方がベターでしょう。関係性によっては許容されることもありますが、その場合でも文書での使用は控えましょう。

・進行中の企画案には使えない
2つ目は「進行中の企画案には使えないこと」です。「たたき(台)」の誤用で特に多いのがこのパターンです。具体的には、ブラッシュアップを依頼したいにもかかわらず「この企画案ですが、再度たたき台を提出してもらえますか?」と言ってしまう場合などがあります。台がない状態で鍛冶屋が金属を叩けないように、「たたき(台)」は「最初に作る案」です。そのため、先ほどの例では「はじめから全て作り直してほしい」という意味になってしまいます。注意しましょう。

関連記事:ブラッシュアップとは? 意味やビジネスシーンでの使い方、言い換え表現、方法を解説

・指示に使う場合はしっかりと方向性を伝える
3つ目は「指示に使う場合はしっかりと方向性を伝えること」です。これまで解説してきたように、「たたき(台)」は「試案」であり、「下書き」であり、「概略」です。そこから練り上げることを想定されているため、一定の抽象度を有するものではありますが、指示する側はそこに甘えてはいけません。どういった方向性のたたきがほしいのか、具体的な趣旨をしっかり伝えるように意識しましょう。

まとめ

ビジネスシーンにおける「たたき」とは「たたき台」の略語です。「より良い成案を目指して意見や批評によって練り上げてゆくための、もとになる案」を意味します。ややくだけた表現であるため、社外の人に向けて使う場合は「草案・原案」などの熟語に言い換えましょう。また、指示に使う場合はしっかりと具体的な方向性を伝えることで、企画や資料のスムーズなブラッシュアップにつながるでしょう。

■執筆者プロフィール
新保友映
新保 友映(しんぼ ともえ)
山口県岩国市出身。青山学院大学卒業後、2003年にアナウンサーとしてニッポン放送に入社。『オールナイトニッポンGOLD』のパーソナリティをはじめ、『ニッポン放送ショウアップナイター』やニュース情報番組、音楽番組など担当。2018年ニッポン放送退社後はフリーアナウンサーとして、ラジオにとどまらず、各種司会、トークショーMC、YouTube、Podcast、話し方講師など幅広く活動。科学でいじめのない世界をつくる「BE A HEROプロジェクト」特任研究員として、子どもたちの授業や大人向け講座の講師も担当している。
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