そんな錦戸さんですが、ここ数年で俳優としての仕事も再開し、どの作品でも高い評価を得ています。今回は、事務所を独立してからの錦戸さんの活動を振り返り、俳優としての素質と魅力を、元テレビ局スタッフの筆者が探っていきたいと思います。
独立後はテレビ出演が減り、音楽活動で大ブレーク
錦戸さんは、旧ジャニーズ事務所を退所してから、主にシンガーソングライターとして活動。アルバムの発売やライブツアーなどを行い、赤西仁さんと共同プロジェクト「N/A」を始動させるなど、現在もファンを魅了しています。ただ、テレビ番組への出演はほとんどなく、いわゆる“辞めジャニ”の洗礼を受けることに。事務所の性加害問題が明るみになるまでは、テレビ業界ではジャニーズ事務所を辞めたタレント(=辞めジャニ)を積極的に起用しない傾向にありました。それは錦戸さんも同じで、ソロで全国ホールツアーを開催するほどの活躍でも、音楽番組でその姿を見ることはない状況に。
それどころか、俳優として大活躍していた錦戸さんは、テレビ、映画などで演技を披露する場がなくなりました。そんな錦戸さんの「復帰作」となったのが、2021年に公開されたショートフィルム『No Return』です。
Amazon Musicの新プロジェクト「Music4Cinema」の作品で、吉田大八監督と映画『羊の木』以来3年ぶりにタッグを組むことに。「音楽×短編映画」がテーマで、錦戸さんの端正なルックスを十分に楽しめる作品となりました。
『No Return』は高評価を得て、ファンは錦戸さんがここから本格的に俳優として復活することを祈ったところです。しかし、なかなかテレビドラマや映画出演がかなわず、本格的に俳優として再始動したのは、2023年5月に放送したドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK BSプレミアム)となりました。
さらなる磨きが増した“俳優”としての魅力
『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』で錦戸さんは、独立後初のテレビドラマ出演となりました。演じたのは、主人公・河合優実さんが演じる岸本七実の父・耕助。久しぶりのドラマで演じた耕助は、作中ではすでに亡くなっている設定で、いるかどうか分からない幻視のような存在です。幽霊でもなく、なんともとらえどころのない役ながら、錦戸さんは抜群の表情と繊細な演技で、ドラマに彩りを与えました。
久しぶりの演技で、しかもかなりトリッキーな役になりましたが評価を得ることに。そして、次に注目を受けたのが、2023年6月22日に配信がスタートしたNetflixシリーズ『離婚しようよ』です。
『離婚しようよ』のあふれ出る色気がSNSで話題に
宮藤官九郎さんと大石静さんが交換日記のように脚本を書き継いだホームコメディー作品で、松坂桃李さんと仲里依紗さんがメインキャストを担当。松坂さん演じる女性関係にだらしないイケメン3世議員・東海林大志を中心に、妻であり国民的女性俳優・黒澤ゆいを仲さんが務めました。錦戸さんが演じたのは、自称アーティストで普段はパチンコで生計を立てる加納恭二。“色気ダダ漏れ”が魅力の男性で、ゆいと出会い不倫関係に陥ります。久しぶりに錦戸さんの演技を堪能できた作品で、ファンはSNSで「色気ヤバすぎる」「恭二沼」ともん絶。
涼しそうな目元とセクシーな声、さらにちょっとしたしぐさで、アイドル時代よりパワーアップした圧倒的な色気を披露。年齢を重ねたこともありますが、ソロアーティストとして活動し、独立後に展開してきた仕事が着実に実を結んだ形になったと考えます。
恭二が信条とする「やりたいことをやる」という自由な考えも、ここ数年で錦戸さんがまさに実践してきたこと。説得力のある演技を見せ、『離婚しようよ』で重要な役を演じきりました。
もちろん、錦戸さんの俳優としての実力は旧ジャニーズ時代から証明されていましたが、ここ最近の活躍はまさに別次元。40歳を手前にして、色気だけでなく演者としての実力が一気に跳ね上がっています。