5:『異人たち』(4月19日より劇場公開)
日本でも1988年に映画化された、脚本家・山田太一の小説『異人たちとの夏』を原作とする、イギリス・アメリカ合作の作品です。物語は、孤独な人生を歩んできた40歳の脚本家が、12歳の時に交通事故で亡くなったはずの父と母と再会し、さらに同じマンションに住む青年と親密な関係になっていくというもの。原作から物語の中心人物をゲイへと変更したことに対して、山田太一と彼の家族は尊重し、最終的に脚本を読んだ後に映画化を後押ししたそうです。主人公はゲイであることを、30年前の姿のままの両親に告白しますが、特に母親からは肯定的な反応を得られません。主人公は「クィア」(昔は侮蔑的な言葉だった)という、今では肯定的に使われる言葉について話し合ったり、「寂しさとゲイには関係はない」という主張をしたりするものの、そこには30年を隔てた価値観のギャップがあったのです。そして、ゲイであることを含む苦悩を振り返りつつも、やがて自分なりの答えを見つけようとする先にあった結末は、この上なく美しいものでした。
8歳の子どもが性自認に迷う映画も
さらに、筆者は未見で恐縮ですが、1月5日より全国順次劇場公開中の『ミツバチと私』は、自分の性自認に迷う子どもの葛藤を描いたドラマです。 新人俳優のソフィア・オテロが、2023年・第73回ベルリン国際映画祭にて史上最年少となる8歳で最優秀主演俳優賞(銀熊賞)を受賞しています。カラッと明るい青春コメディ映画も
さらに、おすすめなのは2023年11月よりAmazonプライムビデオで見放題配信がスタートした『ボトムス ~最底で最強?な私たち~』です。あらすじは、イケていない女子高校生2人が高校最後の1年でチアリーダーとエッチなことをするために、デヴィッド・フィンチャー監督の映画よろしく「ファイト・クラブ」を始めるというもの。
LGBTQ+を扱った映画は、重い葛藤や苦悩を描くことも多いですが、この『ボトムス』はカラッと明るく楽しい雰囲気に満ちている、性的な話題も含めて軽快な青春コメディです。
それでいて、身近な人の心を傷つけてしまうこともあり、そこからやり直そうとする王道のドラマにもグッと来ます。クライマックスはある意味でトンデモな光景が広がりますが、それ以上の予想外の感動も待ち受けていますよ。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。